哺乳類においては,視床下部が胃および腸管を支配することが確かめられているが,哺乳類に比較して,特異性をもつ中枢神経系の構造と機能を示すニワトリではどうであろうか,この点を検討する目的で視床下部を電気的に破壊し,その盲腸運動に与える影響を観察した.
1. 視床下部の前部領域の破壊によつて,運動率および収縮頻度の増加率,10例中9例にみられた.振幅は,すべての例で増加を示したが,1例は運動率および収縮頻度の減少をともなっていた.他方,視床下部の後部領域の破壊は,すべての例で運動率および収縮頻度の減少を示したが3例中1例は振幅の増大がみられた.
2. 組織学的に,視床下部の視索前野,Nucl. preopticusmedialis, Nucl. hypothalamicus anterior medialis,Nucl. paraventricularis magnocesllularisにおよぶ領域の破壊は,盲腸運動と関連が認められ,運動率,収縮および振幅の増加または上昇がみられた.また,視床下部のNucl. hypothalamicus lateralisの後方領域の破壊は,盲腸運動の運動率,収縮および振幅の減少または低下をもたらすのがみられた.