日本畜産学会報
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黒毛和種雌牛の体測定値への非線形発育モデルの当てはめによる発育様相の把握
向井 文雄和田 康彦並河 澄棚瀬 勝美
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1980 年 51 巻 4 号 p. 247-255

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抄録

黒毛和種雌牛の発育様相を簡明なパラメーターとしで把握するための基礎的情報を得る目的で,岐阜県種畜場において,昭和43年以降供用されてきた3グループ計97頭の繁殖雌牛の離乳期以降に経時的に測定された体重および11部位の体測定値にBrody, Logistic, Gompertz, von BertalanffyおよびRichardsの発育モデルを当てはめ,最適モデルを検索し,推定されたパラメーターの産地間差を検討した.各モデルへの適合個体数はRichardsを除き,体重,体高,胸囲,胸深,尻長,腰角幅ではいずれのモデルでも80頭(82%)以上,体長,胸幅,坐骨幅,管囲では50頭(52%)以下であった.特に,胸幅のそれは少なく以後の分析から除外した.すなわち,適合個体数はモヂル間より体測定値間に著しい差異があった.適合の程度を寄与率でみると坐骨幅,管囲を除き90%以上であった.残差平均平方では体重,胸囲,胸深,腰角幅など適合個体数が多く,かっ重要な体測定値でLogisticが最も小さかった.パラメーター間の相関はいずれの測定部位,モデルについても成熟値と成熟速度の間に負の係数が認められた.各モデルの対応するパラメーター相互間の相関係数も非常に高く,いずれのモデルのパラメーターも同じ発育現象を反映しているものと推察された.このようなことから,離乳時以降だけの発育記録をもつ雌牛の体測定値へはLogisticの適用が妥当であると考えられた.Logisticから推定されたパラメーターについて産地間差にみたところ,成熟値は尻長,腰角幅,〓幅で,成熟速度は体長と〓幅を除いて有意差が認められ,体測定値の発育様相に顕著な産地間差が存在することが示唆された.

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