日本畜産学会報
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マウス培養乳腺の細胞分裂に対するゲスターゲンの効果
伊藤 勇夫森 誠正田 陽一河本 馨
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1983 年 54 巻 2 号 p. 106-109

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抄録

プロゲステロンは,マウス乳腺で20α-ヒトロキシ-4-プレグネン-3-オンに代謝されるが,乳癌では主に5α-ブレグナン-3,20-ジオンに代謝される.本研究は,乳腺の細胞分裂に対するプロゲステロンおよびその代謝産物の効果を調べるために,乳線の器官培養を用いておこなったものである.用いた乳腺は,妊娠中期の雌マウス(KA系)より得た.1mm角の乳腺組織片をインスリン(1μg/ml),プロラクチン(5μg/ml)および各種のゲスターゲン(200nM)を含むM199合成培養液中で,温度37度,95%酸素5%炭酸ガスの気相のもとで培養した.培養終了3時間前にコルヒチン(2μg)を添加し,細胞分裂を停止させ,乳腺胞細胞に分裂中期像の現われる頻度を計数した.その結果,プロゲステロンを加えて培養したものの方がインスリンとプロラクチンのみを含んだ培養液中で培養した乳線よりも,培養開始24時間後に分裂の頻度が上昇していた.5α-プレグナン-3,20-ジオンにはこのような効果は認められなかったが,20α-ヒドロキシ-4-プレグネン-3-オンは24時間後ではプロゲステロンと同程度の分裂促進効果があり,この効果は培養開始96時間まで持続していた.以上の結果は,妊娠中の乳腺の細胞分裂にはプロゲステロンおよび,20α-ヒドロキシ-4-プレグネン-3-オンが関与している可能性を示唆している.

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