日本畜産学会報
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日本の公定加熱乾燥法による牛乳固形分定量法の問題点とその改善に関する検討
伊藤 敞敏足立 達針生 敬子山路 厚雄
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1983 年 54 巻 3 号 p. 172-178

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抄録

加熱乾燥法にもとづく牛乳固形分定量法(公定法)について種々の検討を行なった.牛乳固形分量は乾燥時間の延長と共に減少を続け,公定法に示される恒量を求めることは困難であった.このような重量減少には,牛乳成分の一部が加熱によって,カルボニル化合物,硫化水素,酸性および塩基性成分などの揮発性成分に変り,散逸することが関係していることが知られた.固形分中に残存する水分含量をガスクロマトグラフ法で測定した結果から,3時間の乾燥で残存水分が最少となることから,公定法での乾燥時間は3時間と定めるのが妥当であると考えられた.なおこの場合も,固形分中には約1%の水分が残存しており,乾燥時間を延長しても除去できない.また,乾燥後のデシケーター中での放冷時にも,固形分はわずかに吸湿することが認められた.真空乾燥を行なった結果では,98±2°Cでは,乾燥を早め固形分中の残存水分含量を低下させることができたが,固形分重量の減少も続いた.68±2°Cでは,5時間でも乾燥不充分の状態にあった.凍結乾燥法では,牛乳は多孔質のスポンジ状となって非常に良好な乾燥状態となり,褐変化もおこらず,残存水分含量も加熱乾燥法の約半分に低下させることができた.操作の面からは予備凍結を必要とするが,沸騰水浴上での予備乾固は必要とせず,乾燥後の放冷も必要ではないという利点がある.この乾燥原理は,より正確で有用な牛乳固形分定量法のために利用できると考えられる.

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