体重30~80kgの肥育豚(総数で38頭)に肉豚用飼料を給与し,熱的中性圏(20.3±0.6°C)および低温環境(11.7±3.0°C)において呼吸試験を行ない,メタン(CH4)の発生量を測定した.また,総数で22頭の妊娠豚に代謝エネルギー(ME)含量が低(L),中(M)および高(H)と異なる飼料を給与し,熱的中性圏(19.9±0.1°C)でのCH4発生量を測定した.
これらのデータを用いて,主としてMEの測定値に及ぼすCH4として損失するエネルギーの影響を検討した.得られた結果は次の通りである.
(1) 肥育豚の1日当りのCH4の発生量は,熱的中性圏の場合(平均で0.19l/W0.75kg)が低温環境の場合(平均で0.11/W0.75kg)よりも有意(P<0.001)に多かった.1日当りのCH4の発生量は,熱的中性圏では1.7lから6.3l,低温環境下では0.7lから4.71と,体重が大きくなるにつれて増加した.総エネルギー(GE)摂取量に対するCH4としてのエネルギーの損失は,熱的中性圏で平均0.65%,低温環境下では平均0.38%となった.1日当りのCH4の発生量が最大値(6.3l)を示した場合,MEの測定値には約1%の影響を及ぼした.
(2) 妊娠豚の場合,1日当りのCH4の発生量の平均値はL区で18.2l,M区で3.9lおよびH区で7.0lとなった.L区でのCH4発生量の著しい増加は,粗繊維(Cfi)の摂取量と密接に関連しており,全区を通してみた場合,Cfi摂取量の増加につれて,CH4の発生量は直線的に増加した.
L,MおよびH区におけるCH4として失なわれるエネルギー量は,GE摂取量に対してそれぞれ平均で2.2,0.5および0.7%となった.また,CH4の発生量をそれぞれの区における平均値(それぞれ18.2,3.9および7.0l)とした場合,MEの測定値には,それぞれ3.4,0.7および1.1%の影響を及ぼすことが認められた.この事から,飼料中のCfi含量が高い場合には,MEの測定に際して,CH4の発生量を考慮する必要があるものと考えられた.