日本畜産学会報
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フィリピンに分布するスンダイボイノシシ,ヒゲイノシシおよびブタとの雑種個体における血液型と蛋白多型
黒澤 弥悦田中 一栄富田 武勝又 誠Joseph. S. MASANGKAYAlfredo Q. LACUATA
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1989 年 60 巻 1 号 p. 57-69

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抄録

ブタの近縁野生種であるSus属内のイノシシについて,その系統的な関連性を明確にする目的で血液型および血液蛋白多型の調査を実施した.すなわち,フィリピンに分布しているスンダイボイノシシ(Sus verrucosus),ヒゲイノシシ(Sus barbatus)およびブタとスンダイボイノシシの雑種について調査し,これまでに明らかにされているSus scrofa系のイノシシおよびブタと比較検討した.
種の異なる2系統のフィリピン産イノシシとその雑種個体の血液型は,ブタで作製された抗血清による判定が充分可能であったが,ブタとの種間で若干の免疫遺伝的差異の存在が示唆された.蛋白多型の比較では,フィリピン産イノシシの6PGD, PHIおよびEsDシステムは,その表現型がブタの6PGD-A, PHI-BおよびEsD-Aと類似していた.また,Hb, Pa, Tf, Alb,AmおよびCEsシステムは,それぞれの種内または種間において変異を示した.特に,Hb, Tf, AlbおよびCEsシステムにおいて観察された変異は,これまでブタおよびS. scrofa系イノシシ集団ではまだ認められていない.
2種のフィリピン産イノシシにおける種間の遺伝的差異は,当然ながらブタ(S. s. domesticus)および日本産イノシシの亜種間(S. s. leucomystax & S. s.riukiuanus)のそれよりも大きいことが示唆された.また,雑種個体で観察されたHb, AlbおよびTfシステムにおけるへテロ型の変異は,ブタとスンダイボイノシシとの両者から由来した遺伝子によるものと推察された.

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