60 巻 (1989) 8 号 p. 776-782
反芻家畜にエタノールを給与した場合に,ルーメン微生物に対しどのような影響を与えるか,(1) VFAおよびガス生成,(2) 細胞膜脂肪酸組成,についてin vitroで検討した.(1) 混合ルーメン微生物では3%前後まではエタノール添加によって,VFAおよびメタン生成量が増加した.また,エタノール給与牛から採取した微生物では,エタノールの添加により吉草酸およびカプロン酸の生成割合が顕著に増加した.プロトゾアの場合は,培地中へのエタノール添加によってVFA生成量が増加することはなく,3%以上のエタノール添加で著しく減少した.(2) エタノールにより混合ルーメン微生物の細胞膜脂肪酸のうち,不飽和脂肪酸の割合が増加化た.単一菌を用いた実験でのエタノールの影響は,不飽和脂肪酸の割合が増加する群,分枝脂肪酸の割合が増加する群,脂肪酸組成にあまり大きな変化のない群の3群に分けられた.脂肪酸組成が大きく変化する菌種ほど,エタノールによる生育の阻害を受けにくい傾向があった.つまり.ルーメン微生物の中には適応的に細胞膜の脂肪酸組成を変化させることによって,エタノールに対する耐性を得るものがあると推測される.以上の結果から,反芻家畜へのエタノール給与は,ルーメン内でエタノール自体がエネルギー源として微生物に利用されるばかりでなく,脂質代謝にも影響を及ぼし,したがって,宿主動物に供給される脂肪酸が影響を受ける可能性があると考えられる.