日本畜産学会報
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デンマークおよびドイツから輸入されたチーズ中のプロティナーゼ
井越 敬司小林 弘昌有馬 俊六郎
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1994 年 65 巻 7 号 p. 661-667

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抄録

デンマークとドイツからの輸入チーズ4種類(サムソーチーズ,マリボーチーズ以上デンマーク,ティルジットチーズ,トラピストチーズ以上ドイツ)中に含まれているプロティナーゼをCM-セファデックスで分離した.その結果,いずれのチーズからも3種類のプロティナーゼが0.3,0.6および0.8-0.9Mの塩濃度で溶出した.各プロティナーゼの至適pH,各種試薬の影響およびカゼインに対する作用を調べた結果,同じ塩濃度で溶出したプロティナーゼは同じ性質を示した.従って,同じ酵素と考えられた.0.3Mで溶出したプロティナーゼはpH3.8-4.0で最も活性が高く,ペプスタチンで完全に失活した.また,κ-カゼインを速やかに分解し,パラκ-カゼイン様分解物を生成した.0.6Mで溶出したプロティナーゼはpH 4.0で最も活性が高く,ペプスタチンで完全に失活した.また,κ-カゼインを速やかに分解し,αs1-Iカゼイン,β-Iおよびパラκ-カゼインと移動度を同じくする成分を生成した.以上の両酵素の性質は,これら酵素がチーズ製造に使用された凝乳酵素であることを示唆した.また,後者の性質に凝乳酵素のキモシンのそれと一致した.0.8-0.9Mで溶出したプロティナーゼは至適pHを8.0付近に有し,大豆トリプシンインヒビターとジイソプロピルフルオロフォスフェイトで強く阻害された.また,γ-カゼイン様分解物を生成した.これらの性質はミルクアルカリ性プロティナーゼのそれ
と一致した.

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