日本畜産学会報
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第一胃内へのプロピオン酸の投与時間の違いがウシの血漿成長ホルモンおよびインスリン濃度に及ぼす影響
押部 明徳山田 明央安藤 貞押尾 秀一甫立 孝一
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1995 年 66 巻 5 号 p. 449-455

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抄録

種々の注入時間における第一胃内への等量のプロピオン酸投与がウシ血漿成長ホルモン(GH)およびインスリン濃度に及ぼす影響を検討するために,予め第一胃カニュレを装着したホルスタイン種雌牛に対照として食塩水1lを1分間で,また,10mmnol/kg体重のプロピオン酸を1分間(1min区),60分間(60min区)および120分間(120min区)かけて第一胃カニューレから投与し,投与直前から投与後180分までの間の血漿プロピオン酸,グルコース,インスリンおよびGH濃度を測定した.1min区の血漿プロピオン酸濃度はプロピオン酸投与開始20分後に量高値を示した後,減少した.血漿グルコース濃度は,1min区でのみ投与開始60分後を最低値とする低下が認められた.血漿インスリン濃度は,1min区では投与開始20分後をピークとする一過性の上昇が観察された.プロピオン酸投与後180分間のインスリンの反応曲線下の面積(AUC)は,いずれの感作でも対照より大きく(P<0.05),その大きさは60min区>120min区>1min区の順(P<0.05)であった.1min区および60min区のプロピオン酸投与後の血漿GH濃度は投与前に比べて低下(P<0,05)した.GHのAUCは,いずれの感作でも対照区に比べて小さい値(P<0.05)を示したが,感作の違いによる差は認められなかった.以上の結果から,急激で一過性の血漿プロピオン酸濃度の上昇よりも,持続的な上昇の方がインスリン分泌を促進すること,また,GH分泌は血漿プロピオン酸濃度の増加パターンに関係なく,抑制されることが示唆された.

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