2023 年 27 巻 3 号 p. 235-242
日常生活で使用する医薬品などの生活由来化学物質に関して,国内の水環境における実態調査を進めるとともに,水生生物を利用した毒性試験から得られた毒性情報をもとに生態リスク評価を行った。さらに,調査を夏季と冬季の2 季節にわたって行うことで濃度の季節変動も把握した。公共用水域では,抗生物質のクラリスロマイシンや14-ヒドロキシクラリスロマイシン,エリスロマイシンといった抗生物質と,鎮痒剤のクロタミトンに関して,水生生物に対する予測無影響濃度(PNEC)を超える濃度で検出される地点があった。濃度の季節変動に関しては,クラリスロマイシンなどの抗生物質,フェキソフェナジン等の抗ヒスタミン剤は冬期に,昆虫忌避剤のN,N -ジエチル-m -トルアミドは,夏期に濃度が高くなる傾向があった。