2023 年 27 巻 3 号 p. 265-272
産業廃棄物の不適正な処分が行われた最終処分場において,有害性の高い特定悪臭物質である硫化水素を含むガス成分の発生挙動を調査した。硫化水素の発生源となる硫酸根を含む廃棄物の埋設状況に関わらず,地形に依存した内部水の移動と,溶存する有機物濃度の影響を受けて,硫化水素の発生場所は最終処分場の堰堤及び地山で挟まれたエリアに偏在していた。同エリアでは硫化水素の活発な発生に伴って,メタン生成が競合的に阻害されていることも示唆された。以上のことから,作業安全確保の点でも,モニタリングにおける地点の選定の上でも,保有水の水質や地下ガス濃度等の複合的な指標を考慮に入れた慎重な調査計画の検討が必要であることが示された。