地理科学
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小田内通敏の地理学研究 : 在野的・非主流派地理学の形成
岡田 俊裕
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1995 年 50 巻 4 号 p. 233-249

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抄録

小田内通敏(1875-1954)は, 学生時代には史学研究を志向し, 社会学にも強い関心をもっていた。そのため彼の地理学研究は, それらの考察法を重視する傾向をもった。また, 新渡戸稲造(1862-1933)や「郷土会」を介して農政学・農業経済学・植物学などを吸収し, 地域地理学を住民の生業と生活に即して研究する素地が形成された。その最大の成果が社会経済地理学のモノグラフ『帝都と近郊』(1918)であり, 以後, 行政諸機関や企業の委嘱を受け, 朝鮮・満州・樺太・日本各地の集落・人口を社会経済地理学的に調査した。また彼は, このような地理学研究を普及させるための組織づくりにも尽力し, 1926年には地球学団や日本地理学会に対抗して人文地理学会を設立した。歴史学的・社会科学的考察を重視する小田内の学風は, 山崎直方(1870-1929)などの自然科学的な学風に対比される存在であった。しかし, 学界主流を占めた山崎の学風とは異なり, 当時の地理学界・地理教育界に充分波及したとは考え難い。大学の専任教員として地理学研究者の養成にたずさわることのなかった小田内は, その点で小川琢治(1870-1941)や石橋五郎(1876-1946)とも対照的であった。

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