地理科学
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小説の時空間分析 : クンデラ『冗談』をテクストに
成瀬 厚
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1999 年 54 巻 2 号 p. 81-98

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抄録

本稿は,小説を研究対象として地理的記述の方法を探求したものである。具体的には,ミラン・クンデラの処女長編小説『冗談』をテクストとし,主にその形式的側面と記述内容に着目した。4人の作中人物が語り手となっているこの作品においては,同一の人物や想定されている時空間上同一の出来事が語り手によって多様に語られる。この特徴を汲み取るために,語り手を中心とした読者の描く観念的な拡がりを「人物空間」とし,全体のテクスト空間,そして舞台であるチェコという地理空間との関係,また一方で物語の特徴である事件進行の時間と物語展開の時間という時間の二重性として考察した。次に,個々の人物や出来事,感情に関する描写がどのように地域や場所を構成するかという観点から,小説のなかの地理的な要素-点,文脈,場所感覚,景観描写-を分析した。その結果,地理的記述がその対象としての時空間とテクストの形式的側面としての時空間を利用し,ローカルな記述をリージョナルな全体的内容へと変換する物語構造の性格を明らかにした。

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