現代インドにおける縫製業の地域的特性を分析するとともに,デリー首都圏で日本市場向け生産に従事する2社を事例に生産体制とCOVID-19の影響を分析した。インドと中国では,繊維品の産出額が縫製品のそれを上回っているが,縫製品製造の成長は両国とも2010年代を通じて相対的に高くなっている。インド国内の縫製業は企業数,産出額,付加価値額においてタミルナードゥ州の規模が突出する一方,デリー首都圏,マハーラーシュトラ州など大都市を擁する地域での成長もみられる。日系J社,インド企業I社はともに東京に営業所を設置し,受注先との取引交渉にあたっている。両社では国際貨物便を利用するなどリードタイムの短縮が企図されているほか,品質確保のための様々な体制が取られていた。また,両社ともインド全国の主産地から生地等を調達しており,広域的なサプライチェーンを構築している。COVID-19の流行期には強制的な生産停止に見舞われ,生産体制の回復には1年以上を要した。さらに受注量の減少により,工場の閉鎖に踏み切らざるを得なくなった。一方,J社では新たにインド市場向けの生産販売を開始するなど,COVID-19の流行が生産・販売活動の現地化を深化させる契機となった。