智山学報
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葬送儀礼再考
ー主にグリーフワークの視点からー
鈴木 晋怜
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2016 年 65 巻 p. 0137-0148

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抄録

    人類は太古の昔より死を看取り、死者への葬り儀式を行ってきた。しかし、現代において人の死を取り巻く環境は大きく変化してきている。特に我が国においては、平均寿命の伸長、核家族化の進展に伴い、20代、30代という若年層が身内の死を身近に経験することが少なくなり、50代、60代になって初めて親の死を経験するという人が増えている。また、図1で示すように、1951年には自宅で死を迎える人の割合は82.5%だったのに対し、2012年ではわずか12.8%となり、逆に2012年では病院で死を迎える人が78.6%と、ほとんどその割合が逆転している1)。現代において、高齢者の人生の終末は施設に入り、そしてほとんどの場合、最後は病院で死を迎えるということになる。したがって、家族が身内の死にゆく様をリアルに感じる機会がなく、死は隠され、なじみのないものになっている。さらには長寿社会の到来は、長生きすることは当然という風潮を生み、それ以外の死、たとえば事故や災害による死や若年齢での突然死などは、殊更に不幸でショッキングなものというレッテルを貼られてしまう。

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2016 智山学報
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