智山学報
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『智光明荘厳経』の一考察
松本 亮太
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キーワード: 智光明荘厳経, 性起経, 法身
ジャーナル オープンアクセス

2017 年 66 巻 p. 65-80

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抄録

    Sarvabuddhavisayāvatārajñānālokālamkāra(以下『智光明荘厳経』)とは、如来蔵̇思想を理論的に確立したとされる『宝性論』で重要な役割を果たした1)ことで知られる経典である。梵本、チベット訳、漢訳三本が存在し2) 、そのうち僧伽婆羅等訳のみ大幅に分量が少なく(四分の一程度)、それが原型に近いもので、そのほかのものは、大きく増広されたものであると考えられている3)。増広された後のものの中では、曇摩流支訳のみ讃仏偈の数が少ないということ以外、正宗分については多少の出入りはあるものの、分量、内容ともにそれほどの差異は見られない。また、『智光明荘厳経』は、『華厳経』の「宝王如来性起品」(以下『性起経』4))の影響を受けて成立した経典であるとされている5)
 この『智光明荘厳経』の内容を扱った主な研究としては、中村[1953]、高崎[1974]、島村[2009]などが存在する。この中で中村、高崎の研究に関しては、『宝性論』による『智光明荘厳経』の解釈を軸として展開されたものであり、如来蔵思想を確立させるという『宝性論』の意図を含んだ視点からのものとなっている。また島村の研究は、『智光明荘厳経』に説かれている内容を三身説の視点から論じたものである。以上の先行研究は、いずれも後の教理の視点から解釈を施したものであり、『智光明荘厳経』そのものの思想は十分に議論されていない。そこで本経の中心となる教義について改めて考える必要がある。
 本稿では、第1章にて『智光明荘厳経』の内容考察を行い、第2章にて類似した教説を持つといわれる『性起経』との比較を行う。それによって、『智光明荘厳経』の思想の特色などを明らかにすることを目的とする。

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