智山学報
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近世日本の倶舎学における受蘊解釈
倉松 崇忠
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2022 年 71 巻 p. 177-193

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抄録

 本稿は、近世日本の倶舎学における受蘊の解釈を考察するものである。『倶舎論』は、受蘊を「随触を領納する」と定義する。この定義の随触が具体的に何を指しているのかに関して、『光記』が「触に随う境」と解釈し、『宝疏』が「受に随う触」と解釈するという論争がある。日本においても、『光記』『宝疏』の解釈のどちらが正しいのかについて論争があり、「受蘊の名所」として、『倶舎論』の論争における難所の一つとされている。近世日本で著された注釈書の内、普寂の『倶舎論要解』、快道の『倶舎論法義』が『光記』の解釈を支持し、湛慧の『倶舎論指要鈔』、法宣の『倶舎論講義』、佐伯旭雅の『倶舎論名所雑記』は『宝疏』の解釈を支持する。本稿は、この解釈の違いが何故生じたのかを考察するものである。

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2022 智山学報
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