中部日本整形外科災害外科学会雑誌
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原著
月状骨脱臼及び周囲脱臼の治療成績
富田 善雅生田 義和石田 治杉田 直樹大石 芳彰
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2000 年 43 巻 5 号 p. 1110-1117

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抄録

目的 月状骨脱臼及び周囲脱臼に対してその術後成績を調査し, 治療成績や問題点を検討した. 対象及び方法 1984年から1999年までに当科で治療を行い2年以上経過し, 追跡調査可能であった12例12手を対象とした. 症例は全例男性で, 手術時年齢は19歳から45歳(平均26歳)であった. 受傷原因は交通事故や高所からの転落などの直達外力で受傷から手術までの期間は1日から約9週で, GreenとO'Brienの分類ではI型4例, II型6例, III-A型2例であった. 結果 日手会手関節機能評価ではexcellent 7例, good 3例, fair 2例, poor 0例であった. 結論 I型では新鮮例でも靱帯再建の適応がある. II型では舟状骨骨折の治療が問題なく行われれば成績は安定していた. IV-A型では舟状骨骨折の治療や一時的手根骨固定術により成績は安定していたが, 手根不安定性が残存しており広範囲な靱帯損傷の存在が示唆された. 月状骨脱臼及び周囲脱臼は決して頻度の高い外傷ではないが, 初期治療において脱臼が見逃され治療が困難となる症例や早期に加療されたにもかかわらず手根不安定症や関節症へ進展する症例が少なからず存在し, 治療法が確立したものとはいえない. 今回その術後成績を調査し, タイプ別の治療成績や問題点について検討し, 治療方針について考察した.

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© 2000 by The Central Japan Association of Orthopaedic Surgery & Traumatology
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