2009 年 2009 巻 256 号 p. 86-105
本稿は、中国語における「どれくらいの時間(時量)」かを問う疑問代詞を通時的に取り上げ、これらの表現の近世から現代に亘る歴史的変化の推移をあとづけ、その用法に分析を加えたものである。まず、比較的古い表現である“几时”における時点義と時量義の未分化の問題を考察した。次に、“几多时、多少时”など、時量のみを問う疑問代詞の出現に伴い、“几时”の意味が時点義に偏っていく文法化過程、さらにはそのような表現の多様化から生じた“多少+N”と“多大+N”の地域差について確認した。ところが現代中国語においては新興の表現である“多长时间”がその地域差を越えて優勢である。それには内在する時間概念の変化が考えられる。