理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 206
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骨・関節系理学療法
大腿骨に対する脛骨の後方移動距離からみた変形性膝関節症
矢状面X線像からの分析を基に
*野尻 圭悟野口 博司橋詰 裕次増田 愉依古田 幸一黒田 康二
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抄録
【はじめに】
臨床における変形性膝関節症(以下膝OA)の病態において、後部構成体の柔軟性の低下やハムストリングスの過剰筋収縮・PCLの機能不全などにより、脛骨の前方引き出しが出現しない例を経験する。そこで我々は、矢状面X線像から後方移動距離を計測し、健常人と膝OA患者の比較検討を行なったので報告する。
【対象】
対象は、平成10年8月~平成15年8月に当院を受診し、膝OAと診断された患者を無作為に選出した<A群>51名52膝関節(年齢68±13歳)と、下肢に既往のない男性(理学療法士)<B群>5名10膝関節(年齢26.7±3.3)を矢状面X線像にて後方移動距離を計測した。
【方法】
矢状面X線像より、大腿骨の中線(大腿骨骨幹部の中点2点を結んだ線)と脛骨の中線(脛骨骨幹部の中点2点を結んだ線)の交わる点と、膝蓋骨尖を結んだ距離(後方移動距離)を計測した。A群は膝関節屈曲角度が10°20°30°にて撮影しているX線像から計測。B群は膝関節屈曲角度10°20°30°で撮影し、計測を行った。
【結果】
膝関節屈曲角度10°20°30°における各平均値は、A群は30.3mm(23膝;平均66歳)・31.9mm(19膝;平均67.2歳)・34.2mm(9膝;平均77.7歳)で膝関節角度の増加に伴い有意差が認められた(p<0.05)。B群では27mm・29.3mm・32mm(各10膝)でA群と同じく膝関節角度の増加に伴い有意差が認められた(p<0.05)。両群間では、初期屈曲において膝OA患者の方が後方移動距離が大きかった。また、膝関節屈曲10°20°において有意差が最も大きく(p<0.01)、続いて30°(p<0.05)の順であった。
【考察】
健常人に比べ、膝OA患者では大腿骨に対する脛骨の後方移動距離が大きい結果となった。これは、正常膝での初期屈曲における滑りが、膝OA患者では大きいことがわかる。正常膝においてACL・PCLは互いに拮抗しあい、膝関節に安定性を提供している。また、MCLの深層線維はACLと協調し、前方への安定性と滑りの制動を担っている。しかし、膝OAでは内反・脛骨外旋位を呈することが多く、Lateral Thrustを繰り返すことによりMCLは緊張を失い、滑りに対する制動が困難になる。内側コンパートメントに比べ外側コンパートメントの滑りは大きいが、脛骨が外旋しているためその運動はすでに終了していると考えられる。これにより、膝窩部を形成する大腿顆部殻の柔軟性は低下し、膝関節の屈曲・伸展に伴いPCLは過剰に引き伸ばされ、後方移動距離を大きくするのではないかと考える。膝関節屈曲30°ではACLは若干の緩みを有するため、正常膝に対する有意差は少なかった。10°20°屈曲位では後方移動距離が大きくなっており、滑りが屈曲初期時に大きくなっていると考えられる。
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© 2004 日本理学療法士協会
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