理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 720
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内部障害系理学療法
人工呼吸器管理を経過したギランバレー症候群4症例の検討
*谷口 百恵藤本 好磯谷 明希中井 基之田中 千春松下 隆司大森 惠中村 博彦堀田 隆史萩原 良治石川 朗
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抄録
【目的】ギランバレー症候群は急性発症の運動麻痺,深部腱反射の消失,髄液の蛋白細胞解離を特徴とする急性炎症性脱髄疾患と定義されている.重症例においては,一般的に呼吸管理が必要といわれているが,詳細な報告は少ないのが現状である.今回,平成16年1月から6月の間に当院に入院,人工呼吸器管理を行ったギランバレー症候群4症例について,入院経過と呼吸理学療法の経過を後方視的に検討したので考察を加えて報告する.
【対象・経過】【症例1】39歳男性,1月2日発症.2病日挿管.4病日呼吸筋麻痺により人工呼吸器装着(FiO20.4 SIMV12回/min TV530ml PEEP4cmH2O).6病日理学療法(以下PT)開始,関節可動域訓練,呼気介助,体位ドレナージ導入.26・32病日二度NPPV試みるが口咽頭機能障害のため唾液誤嚥が認められ再度呼吸器装着.30病日背側部に痰の貯留を認め肺炎予防に腹臥位管理開始.34病日肺塞栓併発.48病日呼吸器離脱,75病日気管切開,136病日気切部閉鎖.244病日現在院内サークル歩行自立.【症例2】77歳女性,4月24日発症.10病日当院転院.11病日呼吸筋麻痺により人工呼吸器装着(FiO20.4 SIMV10回/min TV400ml PEEP6cmH2O).14病日PT開始,関節可動域訓練,体位交換管理導入.25病日呼吸器離脱.146病日独歩で自宅退院.【症例3】41歳女性,4月28日発症.2病日呼吸筋麻痺により人工呼吸器装着(FiO20.6 SIMV15回/min TV500ml).9病日呼吸器離脱, PT開始,関節可動域訓練導入.30~59病日他院にて肝機能加療.120病日独歩で自宅退院.【症例4】58歳男性,4月30日発症.6病日SpO2低く人工呼吸器装着(FiO20.6 VCV15回/min TV580ml PEEP8cmH2O).8病日PT開始,関節可動域訓練導入.9~17病日排痰目的に体外式陽陰圧呼吸器併用し,排痰の促通認める.14病日挿管チューブ交換後左無気肺認め気管支鏡施行後改善.19病日気管切開,21病日呼吸器離脱を目的に呼気介助導入.施行中に呼吸筋疲労により異常呼吸パターン出現.125病日現在気切部閉鎖され病棟内車椅子介助レベル.
【考察】本研究の4症例は予後不良因子とされる人工呼吸器管理を経たが,多様な回復経過を辿った.回復遷延した症例1は,挿管の長期化防止とウィーニングを目的にNPPVを二度試みたが,唾液誤嚥のため再挿管となった.早期の球麻痺,口咽頭機能の評価の重要性が示唆された.症例4は呼気介助施行中,呼吸筋疲労により異常呼吸パターン出現した.早期からの呼吸筋疲労に対する観察・評価が必要と思われる.また,全例を通して無気肺・下側肺傷害等の合併症,二次的障害の予防に加え,人工呼吸器管理・四肢麻痺等の急速な症状進行等の予後不良因子の評価も重要と考えられる.
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© 2005 日本理学療法士協会
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