理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 571
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理学療法基礎系
ラット膝関節4週固定後の関節構成体の変化
*松﨑 太郎細 正博上田 寿子武村 啓住立野 勝彦
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キーワード: ラット, 関節固定, 関節拘縮
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抄録

【目的】我々は関節拘縮の病態像を明らかにするため,ラットの後枝膝関節に関節拘縮を作成し関節構成体の変化を調査してきた。今回の目的は第40回日本理学療法学術大会にて報告した関節拘縮モデルを使用して関節固定を4週間行い,関節構成体の変化を観察する事である。

【方法】9週齡のWister系雄性ラットを5匹(220~268g)使用した。ラットは8週齡にて入手し,1週間ケージ内にて飼育した後に実験を行った。先行研究に倣い,麻酔下にて膝関節を金網とギプスを使用して固定した。金網とギプスの重量は平均18±2.0gであった。固定時には股関節,足関節の運動に支障を来さないよう留意し,固定期間は先行研究との比較を行うため4週間とした。固定期間中は創と浮腫の予防に留意し,また外れた場合には速やかに再固定を行った。実験開始1週経過後,ラットが固定を噛み切る事例が増えたため,ジャケットを装着させた。ジャケット着用後でもラットは着用前と変わらず両前肢と両後肢を使いケージ内を移動する事が可能であり,水,餌はともに自由に摂取可能であった。実験期間が終了した後,麻酔下にて膝関節に無理な力を掛けないよう留意し固定を外した。灌流固定を行った後に速やかに両下肢を採取した。採取した後肢を組織固定後に脱灰し,膝関節の切り出しを行い,中和,パラフィン包埋を行ってから薄切し標本とした。ヘマトキシリン・エオジン染色を行なった後に光学顕微鏡下で関節構成体を病理組織学的に観察し,デジタルカメラにて撮影した。

【結果】線維芽細胞と推測される紡錐形細胞からなる膜状の組織が大腿骨及び脛骨の軟骨表面を覆うように増生していた。また半月板周囲から関節腔内に滑膜様組織あるいは肉芽組織が増生しており,組織中では血管増生も観察され,うっ血像が観察された。また,膝蓋骨下方から前部半月板周囲までの関節包で滑膜様の細胞が増生していた。これらの増生した組織が関節軟骨と癒着している部分では関節軟骨の欠損が観察された。全ての標本で出血および炎症細胞浸潤の所見は見られなかった。

【まとめ】1.関節を4週間固定して関節拘縮を作製し,拘縮関節内での病理組織学的変化を観察,検討した。2.拘縮を生じた関節内では,先行研究と同様に1)滑膜様組織の増生,2)増生した滑膜様組織と関節軟骨の癒着,3)滑膜様組織が癒着した箇所での関節軟骨の消失が観察されたが,関節腔内の変化はより強く生じていた。3.先行研究と異なり,炎症細胞は観察されなかった。4.今後さらに関節固定期間を延長した拘縮モデルを作成して拘縮発生の経過を明らかにする必要が示唆された。

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© 2006 日本理学療法士協会
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