理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 583
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理学療法基礎系
タイミング同期動作における同期誤差の推移および同期誤差と筋積分値の関係
*伊藤 正憲弓永 久哲鈴木 俊明
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抄録

【目的】周期的に繰り返される刺激に合わせて随意運動を同期発現(以下、タイミング同期動作)するためには、動作を外界の状況にあわせて予測する必要がある。タイミング同期動作の同期誤差については、時間知覚などに関する報告が多く、実際の動作を筋電図学的に検討した報告は少ない。本研究は、聴覚刺激を用いたタイミング同期動作における同期誤差の推移および同期誤差と筋積分値の関係を検討し、随意運動発現の様式について考察することを目的とした。

【対象と方法】対象は右利きの健常者10名、平均年齢30.1±7.9歳とした。聴覚刺激および筋活動の記録にはVikingIV(Nicolet社製)を用いた。被験者は椅座位とし、机上に位置させた右示指先端にワイヤ式変位計(共和電業製)を装着した。聴覚刺激の刺激条件は、刺激の入力にはヘッドホンを使用し、刺激頻度0.5Hz、刺激強度90dB、刺激周波数1KHz、刺激回数は1試行毎9回の連続刺激とした。タイミング同期動作の動作課題は右示指伸展とし、記録筋は右示指伸筋とした。実験課題は、聴覚刺激に合わせて右示指伸展を同期発現させた。被験者1人に対し3試行実施し、3試行目の記録を個人のデータとした。ワイヤ式変位計により得られた右示指伸展開始時間と聴覚刺激入力時間との差を同期誤差として算出した。また、得られた右示指伸筋の筋電図波形より筋積分値を求め、放電時間で除し、単位時間当たりの筋積分値を算出した。検討項目は、刺激回数変化に伴う同期誤差の推移および同期誤差と筋積分値との関係とした。統計処理は、一元配置分散分析とSNK検定法による多重比較およびPearsonの相関係数を用いて検討した。被験者には実験の目的と方法を説明し、同意を得て実施した。

【結果】1回目の同期誤差と比較し、3~9回目の同期誤差は有意に短縮した(p<0.01)。2回目の同期誤差と比較し、4~9回目の同期誤差は有意に短縮した(p<0.01)。3回目以降の同期誤差に有意差は認められなかった。また、同期誤差と筋積分値の間には有意な相関を認めなかった。

【考察】刺激回数変化に伴う同期誤差の推移パターンにおいては、4回目の聴覚刺激入力までに刺激の周期性を認知し、4回目以降は予測的な随意運動制御によりタイミングを合わせていると考えられる。これは、過去における時間経験と小脳によるfeedforward制御が関与していると考えられる。同期誤差と筋積分値の関係においては、同期誤差が減少すると、少ない筋活動で効率のよい運動ができる、あるいは運動が随意化されることで筋活動が増大することが予想された。本研究結果では、同期誤差と筋積分値に相関は認められなかった。これは、予測的な随意運動発現の初期には、効率の良い運動と随意化された運動が混在し、タイミングを同期させるためにより調節的な動作が生じていると考えられる。

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© 2006 日本理学療法士協会
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