理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 113
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺者の屋内歩行自立度と頚・体幹・骨盤帯運動機能検査との関連
*真喜屋 賢二金澤 寿久江口 友紀高橋 啓輔照屋 聡嶋田 智明
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抄録
【目的】
臨床場面で自力歩行可能な脳卒中片麻痺患者(片麻痺者)に自立レベルか監視レベルかの判定を下す基準は、経験の占める割合が大きい。我々の先行研究では、片麻痺者の屋内歩行自立度判定の諸因子を検討した結果、頚・体幹・骨盤帯運動機能検査(NTP)で、stage5以上の判定が歩行自立度判定上の一要因である所見を得た。今回はNTP各ステージの動作項目と歩行自立度判定の関連性について検証したので報告する。
【対象】
対象は、当院入院・外来・通所リハで理学療法を継続中の片麻痺者35名で、屋内歩行が自立している群(自立群)20名と屋内歩行に監視を要する群(監視群)15名に群分けした。内訳は年齢63±11歳。罹患日数648±876.76日。麻痺側は右18名・左17名。下肢Br.StageはIIIが7名、IVが9名、Vが6名、VIが13名。ADL(FIM)は114±15.2点。対象者は検査内容を理解できると判断された者とし、歩行に支障をきたす整形疾患・疼痛・高次脳機能障害を有する者は除外した。
【方法】
1.1)性別2)年齢3)罹患日数4)麻痺側5)下肢Br.stage6)ADL7)10m最大歩行速度8)6分間連続歩行距離9)time up and Go test10)30秒間立ち上がり回数11)片脚立位(非麻痺側)における2群間の有意差を検証。
2.NTPを計測し、stage5以上群の中に自立群が占める割合(一致率)と、stage4以下と監視群の一致率を算出。
3.stage4と5の項目において、どの項目が自立群、監視群間で動作可能率に有意差があるかを検証。1、2の検定は2項検定、3の検定は2サンプル比率検定を使用。
【結果】
1.1)から6)と11)においては二群間に優位な差はなく、7)から10)においては優位な差を認めた(危険率5%水準)。
2.stage5以上群には自立群の占める傾向が高いことが一致率より示され、stage4以下群と監視群との一致率から特徴的な傾向は認められなかった(危険率5%水準)。
3.「長坐位から膝立位になる」(stage4-c)と、「膝率で頚を正中位に保持し、体幹の回旋を左右へ30°ずつ繰り返しできる」(stage5-a)の2項目に、自立群と監視群の有意差が認められた(前者1%、後者5%水準)。
【考察】
自力歩行可能な片麻痺者35名にNTPを計測したところ、stage5が屋内歩行自立度の判定基準になることが示唆された。またNTPの項目では、stage4-cと5-aに二群間の有意差が認められた。歩行は静的立位姿勢から連続した姿勢変化が求められる動作である。stage4-cは、動的姿勢変化求められる動作であることから2群間に有意差が出たと思われる。このことより「長坐位から膝立位になる」という動作が、片麻痺患者の歩行自立判定を下す参考基準に成り得ることが示唆された。今後、症例数を増やし検証を重ねていく中で信頼性を高めていきたい。
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© 2006 日本理学療法士協会
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