理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 177
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骨・関節系理学療法
足関節機能的不安定性を有する者の足関節位置覚障害の特性
自動的検査と他動的検査の比較
*横山 茂樹河野 義広松坂 誠應根地嶋 誠
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抄録

【目的】足関節内反捻挫後遺症における足関節機能的不安定性(以下、FAI)の評価指標として、関節位置覚(以下、JPS)が挙げられ、その方法論にはさまざまな報告がある。本研究では、FAIを有する者を対象に自動的および他動的検査時おける足関節JPS障害の特性を明らかにすることによって、検査方法の相違による意義を検証することを目的とした。
【方法】対象はFAIを有する男性18名(平均年齢19.6±1.5歳)とした。また対照群として健常男性29名(平均年齢20.3±4.4歳)とした。FAIの判定は、6ヶ月以内に捻挫の既往がないこと、日常生活や運動時に月2回以上のgiving wayを訴えることを条件とした。尚、対象者から研究趣旨の承諾を得た。計測方法は2台のカメラと足関節測定装置を利用した3次元肢位解析システムを用いた。計測条件として、被検者は実験中目隠しをし、端座位による自動的および他動的検査の2条件とした。設定角度は、内がえし0度位および20度位における足関節背屈15度から底屈30度までの間を5度毎の10肢位とした。測定順序は無作為とし、測定回数は各肢位1回ずつとした。実験手順として、最初に設定角度に15秒保持した。その後、徒手的に足部を載せた台を動かしながら、被検者に設定角度と一致した位置を口頭で示してもらい、その肢位をカメラ2台で撮影した。撮影された画像から足関節背底屈角度を算出した。得られた角度から設定角度の差を実測誤差、その絶対値を絶対誤差として算出した。統計学的処理は、統計パッケージSPSSを用いて、FAI群と健常群の比較は2元配置分散分析を行い、各条件下における背底屈角度間の比較は多重比較を行った。尚、有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】FAI群と健常群の比較について、内がえし0度位では自動的および他動的検査において実測誤差・絶対誤差のいずれにも交互作用は認められなかった。一方、内がえし20度位では自動的検査において実測誤差・絶対誤差ともに交互作用は認められなかったが、他動的検査では実測誤差・絶対誤差に交互作用が認められた。また多重比較からFAI群の内がえし0度および20度位において、自動的検査では実測誤差・絶対誤差のいずれにも有意差は認められなかったが。しかし他動検査では実測誤差・絶対誤差において背屈域と底屈域の間に有意差が認められた。
【考察】Konradsenらは健常者を対象とし、足関節外側側副靱帯に麻酔をかけてJPSを調べた結果、他動的検査では誤認角度は増加したが、自動的検査では誤認角度に差は認められなかったと報告している。今回、FAI群を対象としたJPSも同様の結果であった。これは自動的検査ではγ―α連関によって筋紡錘の緊張は一定に保たれるが、他動的検査では足関節外側靱帯損傷に伴う関節メカノレセプターの機能不全による影響を受けていると推察される。

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© 2006 日本理学療法士協会
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