理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 192
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骨・関節系理学療法
立ち上がり動作における腓骨筋の機能について
動作パターン別にみた役割
*平野 佳代子長尾 邦彦野村 亜樹川野 哲英
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抄録

【目的】一般的に腓骨筋は距骨下関節での外転と距腿関節での底屈に働き、足部アーチを保持する役割も担っている。川野は底屈運動時における短腓骨筋(PB)と長腓骨筋(PL)の機能的な関係や、更に第5中足骨動揺性(5-M)が関連することを示唆している。これは荷重位で下腿を前傾する運動でも、5-M の関与が推測される。
 今回、立ち上がり動作(SU)と歩行時の腓骨筋の活動について、興味ある知見を得たので報告する。
【方法】健常男性で5-Mの徒手的不安定性陽性1名(A)、陰性1名(B)の計2名。A:年齢29歳、身長179.2cm、体重74.5kg。B: 20歳、163.4cm、65.3kg。1:測定肢を1歩前で荷重した際のイス座位からのSUの相を、開始から臀部離床をF-M、その後から下腿前傾角度最大までをM-Tとした。開始時の膝関節角度を80、90、100度の3角度、更に足先をNeutral、Toe-out(TO)、Toe-in(TI)の3つのパターン、計9種類のタスクで比較した。計測は足圧分布(F-スキャン)を確認しつつ、二次元動作解析装置(peak)により下腿前傾角度、双極電極法による表面筋電図(EMG:PowerLab/4st)でサンプリング周波数は10kHzにて PL、PB、後脛骨筋(TP)、腓腹筋外側頭(GL)、内側頭(GM)、ヒラメ筋の筋活動を測定した。2:足底挿板を作成し、歩行時に有無での足圧分布とEMGを観察した。
【結果及び考察】本研究は腓骨筋の足部安定性への関与について調べた。特にPBの付着部である第5中足骨底において立方骨との間の不安定性との関与を認める結果となった。
 両者とも足圧はSUではTOで内側、TIは外側と荷重点が変化し、EMGでは90度、110度でPL、PBの筋放電はTOが大きくなった。これは腓骨筋群の緊張がTOでは外転運動が要求されたためと思われた。両者間に相違が見られたのは、Aは80度のタスク以外でGM、GLの筋放電が大きくBは小さかった。またBはF-M初期から筋放電が大きく出現したのに比べ、Aは潜時がありその後断続する傾向にあった。これらは5-Mによる不安定性が、腓腹筋の筋活動により安定性を確保するためと考えられる。
 SUではAがBに比べて下腿前傾角が大きく、M-Tでは腓骨筋の筋活動は断続的で、腓腹筋の活動量が大きくなっていた。一方歩行では立脚中期から踵離地で5-Mと腓骨筋筋活動には何らかの関与が示唆されていた。PB付着部にある可動性は外側縦アーチの降下となり、SUの下腿前傾角が大きくなる要因であろう。次にPL収縮時の外転トルクの発生様式への影響が考えられ、SUでの踵離地でレバーアームである足部の剛性が低下したことが腓骨筋の不安定な筋活動となり、歩行時の腓骨筋活動でも同様な傾向が示唆された。 また足底板装着時では明らかに足圧が分散されPL・PBが立脚中期から踵離地、TPが踵接地から立脚中期に筋放電が大きくなり安定性に関与していることが伺われた。
 今後対象数を増やし検討していきたい。


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© 2006 日本理学療法士協会
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