理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 436
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骨・関節系理学療法
振動刺激が有痛性の膝に及ぼす影響
*松本 路子村上 恵津子松原 貴子藤本 太郎田崎 洋光三木 明徳
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キーワード: 振動刺激, 痛み, 関節可動域
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抄録
【目的】我々は,脊髄神経後枝(後枝)支配の多裂筋に振動刺激を与えることで,同じ脊髄分節の脊髄神経前枝(前枝)支配の四肢において,関節可動域(ROM)が増加し,筋硬度が減少することを報告した。しかしながら,振動刺激が痛みを有する患者の四肢に及ぼす影響は十分に検討されていない。そこで本研究では,膝痛ならびに膝関節のROM制限を有する患者を対象とし,後枝支配の一側腰部多裂筋に振動刺激を与え,同分節の前枝支配領域にある膝の痛み,ROM,下肢筋の筋硬度を両側で調べた。

【方法】膝の痛みとROM制限を有する患者10名(男性5名,女性5名,平均年齢65.4±15.7歳)を対象とし,MyoVib(周波数25Hz,振幅9mm;三協機械)を用いて,振動刺激をL2からS2レベルの一側多裂筋に20分間与えた。膝のROMと痛み,下肢筋の筋硬度を振動刺激の直前と直後に測定した。ROMは膝関節の屈曲と伸展を測定した。痛みはVisual Analogue Scale(VAS)により膝関節の他動的最大屈曲位,最大伸展位において測定し,振動刺激後には刺激前の最大角度(刺激前角度)においても測定した。筋硬度はPEK-1(井元製作所)を用いて,大腿直筋,ハムストリングス,腓腹筋外側頭と内側頭でそれぞれ3回ずつ測定し,平均値を測定値とした。ROM,筋硬度は対応のあるt検定またはWilcoxon符号付順位和検定を用いて比較し,VASは一元配置分散分析とFisher’s PLSDを用いて多重比較した。

【結果】刺激後,刺激側の膝関節ROMは屈曲,伸展ともに有意に増加した(p<0.05)。刺激後,刺激前角度において膝痛はすべての対象で消失した。刺激後に増加した最大角度でのVASと刺激前のVASに有意な差はなかった。さらに対側でも,ROMと膝痛に同様の改善が認められた。筋硬度については,刺激側の腓腹筋内側頭を除いて有意差はなかった。

【考察】今回の結果から,一側後枝支配筋へ振動刺激を与えることで,同分節前枝支配領域の膝痛,ROMが両側性に改善されることが示された。ROMの制限因子には,関節包や靱帯の構造的変化,筋の短縮や伸張性低下,痛みによる防御収縮を含む筋緊張の亢進等がある。これらのなかで結合組織性の構造物が振動刺激で即時的に変化する可能性は低い。したがって,振動刺激は直接的に,あるいは疼痛抑制により間接的に膝周囲筋の伸張性を改善し,緊張を抑制してROMを改善させる可能性が示唆された。本研究では,筋硬度測定深度に限界があったため,筋硬度に著変は認められなかった。今後は対象筋の硬度を実測し,振動刺激による筋緊張,筋硬度への効果について実証して,さらなる検討を加えていく必要がある。
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© 2006 日本理学療法士協会
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