理学療法学Supplement
Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 990
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生活環境支援系理学療法
通院可能な軽度障害をもつ高齢者の床からの立ち上がり動作と転倒との関係について
*工藤 公晴西山 保弘木村 五郎加藤 和美村井 祥二安邊 小春曽根崎 圭太長野 恵理子衛藤 美保
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抄録
【はじめに】高齢者にとって古い日本家屋で生活することは、畳からの立ち上がりや段差でのつまずきなどにより転倒リスクが高くなる。それは高齢者の身体機能が若年者に比べバランスや筋力や動作の敏捷性が劣るためである。我々は、高齢者の身体機能の低下要因の中で、和式生活特有の床からの立ち上がり動作のもつ意味と重要性に着目した。転倒リスクを回避する一つの指標として、または訓練法としてその立ち上がり時間と身体機能および日常生活活動などの評価因子を分析したのでここに報告する。
【方法】対象は在宅で床からの立ち上がりを介助なしで可能な高齢者36名(男性6名、女性30名)、平均年齢は79.03±6.67歳(最小66歳、最大91歳)であった。年齢内訳は65から74歳8名、75から84歳21名、85歳以上7名であった。尚、本研究を行うにあたり、研究内容、主旨を十分説明し、理解と同意を得たうえで行った。方法は、長座位からの床からの立ち上がりに要する時間(以下、床起立時間と略)テスト、Timed Up and Goテスト(TUG)、10m歩行、開眼片足起立時間、握力、機能的自立度評価法(FIM)、転倒恐怖度スケール(MFES)、過去1年間の転倒状況、身長、体重、BMIを測定した。床起立時間は床不使用群は、床に手をつかずに立ち上がりが可能な群、床支持台使用群は、床もしくは支持物(36cm台)に手をついて立ち上がり可能な群とした。床不使用群(13名)床支持台使用群(23名)に分類し、所要時間と関連因子の相関をみた。さらに36例すべての項目間の相関行列および転倒群(17名)と非転倒群(19名)にグループ分け、36名すべてが可能であった台をついて立ち上がる所要時間とそれぞれの関係を検討した。
【結果】床不使用群では、MFES(P<0.01)を除くすべての項目因子に相関を認めなかった。床支持台使用群は、MFES(P<0.01)、FIM(P<0,01)、10m歩行(P<0.01)、TUG(P<0.01)に相関を認めた。36例の支持台使用での床起立時間は、片足起立時間、年齢、握力に無相関を認めたが、他は高い相関をみた(P<0.01)。転倒の有無は、床不使用群13例中3例に対し、床支持台使用群は23例中13例であった。転倒群、非転倒群は、双方に支持台を使用しての床起立所要時間とTUG、10m歩行、FIM、MFESとの高い相関を認めた。
【考察とまとめ】床起立時間は、TUG、10m歩行、FIM、MFESとの高い相関を認め、TUGや10m歩行同様に信頼度の高いADLや転倒の指標になりうることが示唆された。また、安全を配慮したうえでの訓練法としての応用も考えられる。今後、より床起立時間の分散を図るためのタイプ別分類や方法の難易度を検討する必要がある。

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© 2006 日本理学療法士協会
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