理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 603
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理学療法基礎系
肩関節屈曲保持における三角筋筋活動
屈曲角度と各筋線維との関係
*布谷 美樹三浦 雄一郎福島 秀晃鈴木 俊明森原 徹
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キーワード: 肩関節屈曲, 三角筋, 筋電図
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抄録

【はじめに】三角筋は上腕骨の上腕骨頭を覆う三角形の筋であり、前部線維、中部線維、後部線維の三部に分けられ、それぞれ肩関節の屈曲、外転、伸展に作用することは一般的に良く知られている。しかし、肩関節屈曲運動と三角筋各線維の関係についての報告は少ない。肩関節機能の理解をさらに深めるべく肩関節屈曲時の肩関節周囲筋の活動に関して筋電図学的分析を行ったところ、屈曲角度の変化と三角筋各線維との関係について興味深い知見を得たのでここに報告する。

【対象と方法】対象は上肢に整形外科的疾患の既往のない健常者6名(男性4名、女性2名、平均年齢32.3±6.6歳)の両側12肢とした。測定には筋電計マイオシステム1200(NORAXON社製)を用いた。運動課題は端座位での肩関節屈曲位保持とし、屈曲角度は0°、30°、60°、90°、120°、150°位とした。肘関節伸展、肩関節内外旋中間位を規定した。測定筋は運動側の三角筋(前部線維、中部線維、後部線維)とした。測定時間は3秒間、測定回数は3回とし、平均値をもって個人データとした。分析方法は、基本肢位(屈曲0°)における三角筋各線維での筋電図積分値を基準とし、各屈曲角度での筋活動を筋電図積分値相対値として求めた。各筋線維に対して角度間における一元配置の分散分析および多重比較検定を実施した。なお、対象者には本研究の目的・方法を説明し了解を得た。

【結果】肩関節屈曲角度と三角筋各線維の筋電図パターンの傾向は、肩関節屈曲90°までは主に前部線維が作用し、90°以上では前部線維以外に中部線維と後部線維においても屈曲角度の増加に伴い筋電図積分値相対値が増大した。統計学的には、前部線維において90°位以上で30°位より有意に増加した(p<0.05)が、30°位と60°位間には有意差は認められなかった。中部線維、後部線維では120°位以上において30°、60°位より有意に増加(p<0.05)、150°位では90°位と比較しても有意に増加した(p<0.05)。

【考察】肩関節屈曲90°までは屈曲運動の主動作筋である三角筋前部線維が上腕骨の方向を決定して積極的に屈曲保持を行っていると考える。肩関節屈曲120°を超えると前部線維以外にも中部線維と後部線維の筋活動が増大する。中部線維は筋線維方向から屈曲方向にも関与すると考えられるが、後部線維に関しては筋線維方向を考慮しても屈曲方向に関与するとは考えられない。肩甲上腕リズムによると肩甲骨は肩関節屈曲60°以降で胸郭面上を上方回旋するため関節窩が前額面に一致しようとする。その結果、屈曲角度の増加に対して三角筋前部、中部、後部線維が協調的に活動増加することで骨頭は関節窩に支点を得て安定した屈曲保持が可能となると考えられる。肩関節屈曲保持における三角筋の役割には1)前部線維による方向付け、2)三角筋全線維による肩甲上腕関節の安定化作用があると示唆された。

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© 2007 日本理学療法士協会
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