理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 636
会議情報

理学療法基礎系
Kneeling Quadricepsトレーニングの筋電図学的検討
*宮坂 淳介市橋 則明建内 宏重森 公彦西村 純中村 孝志
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】前十字靭帯(ACL)損傷後の大腿四頭筋トレーニングは、膝関節70°以上の屈曲位で行うことが推奨されており、その方法の一つに膝立ち位からの体幹後傾トレーニング(Kneeling Quadriceps 以下KQ)がある。しかし、体幹後傾角度によりどの程度の筋活動が得られているのか、筋電図学的な側面から検討している報告はない。本研究の目的は、KQにおける体幹後傾角度ごとの下肢・体幹筋筋電図を測定し、後傾角度と筋活動量の関係を明らかにし、KQトレーニングの有用性を検証することである。
【対象と方法】健常成人男性13人(平均年齢28.3±4.3歳、平均身長170.3±6.1cm、平均体重64.0±8.4kg)を対象に、腹直筋(RA)・大腿直筋(RF)・内側広筋(VM)・大殿筋(GM)および内側ハムストリングス(MH)の筋電図を測定した。体幹・股関節を屈伸0°で固定したまま、直立膝立ち位(0°)から、10°・20°・30°・最大と体幹を後傾させ、それぞれ姿勢が安定してから3秒間の筋電図を測定した。測定値は各筋の最大随意収縮時のRoot Mean Square(RMS)振幅値を100%として正規化し、%RMSとして表した。また、膝伸展等尺性最大筋力を測定し最大後傾角度との相関を調べた。なお、統計処理には反復測定分散分析およびPearsonの相関係数を用いた。
【結果】RF・VMは、後傾角度を増大させていくにつれて有意に筋活動量は増加した(RF;2.1~62.4%RMS、VM;5.2~126.2%RMS)。また、RA筋活動量も、3.9%RMSから80.3%RMSへと有意に増大した。一方、GM・MHの筋活動量はそれぞれ有意に増加したものの、GM;2.8~26.1%RMS、MH;2.4~11.7%RMSにとどまった。なお、膝伸展筋力の平均トルク(体重比)は3.9N・m/kg、最大後傾角度の平均値は45.7°であったが、両者には有意な相関は認められなかった(r=0.25)。
【考察】身体の前面にある筋(RA・RF・VM)の活動量が増加し、GM・MHの筋活動量が低くとどまったのは、体幹後傾に伴う重心の後方移動により、膝関節屈曲および股関節・体幹伸展のモーメントが増加したためと考えられる。最大後傾位ではRA・RF・VMにおいて筋力増強効果を得られるとされる最大の60%以上の筋活動量が認められた。中でもVMでは126.2%RMSに達し、二関節筋であるRFに比して筋活動量は高くなったことから、姿勢保持に対する単関節筋の重要性が示唆された。一方、体幹最大後傾角度と膝伸展最大筋力との相関はなかった。これは、体幹後傾角度を増すには膝伸展筋だけでなく体幹・股関節の屈曲筋との協調的な収縮が必要になるためであり、KQ最大後傾角度は膝伸展筋力では測定できない体幹を含めたパフォーマンスの評価にも有用であると考えられる。
【まとめ】KQは、VM・RF・RAに対して無負荷で行える筋力トレーニングとしては高強度のトレーニングが可能であること、加えて、KQ最大後傾角度により体幹および下肢筋力の協調的なパフォーマンス評価が可能であることが示唆された。

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top