理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 637
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理学療法基礎系
スクワットにおける高頻度振動刺激が下肢筋活動に与える影響
*森 公彦市橋 則明建内 宏重宮坂 淳介西村 純中村 孝志
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抄録

【目的】骨格筋に対する振動刺激は筋紡錘の一次終末を興奮させ、伸張反射による筋活動を誘発するとされている。これは緊張性振動反射とよばれ、この特性を利用して近年筋力強化を目的とした振動刺激装置が開発され、海外ではその有用性が報告されつつある。しかし、スクワット動作時に振動刺激を与えた報告は少なく不明な点が多い。本研究の目的は、スクワット肢位における振動刺激が下肢筋活動に及ぼす影響を明確にすることである。
【対象と方法】本研究に同意した下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常成人男性13名(平均年齢は28.3±4.3歳)を対象とした。筋電図(ニホンサンテク社製)の測定筋は、右下肢の大腿直筋(RF)、内側広筋(VM)、内側ハムストリングス(MH)、前脛骨筋(TA)、腓腹筋 (GC)、ヒラメ筋(SO)の6筋とした。表面筋電図を双極導出するために、2個の表面電極を各筋線維に平行に電極中心間隔20mmで貼付した。測定は左右交互振動式の振動刺激装置(エルクコーポレーション社製G-Fitness)上で、両脚スクワット肢位を膝屈曲角度60度、体幹を垂直、足圧中心位置を前方位、中間位、後方位で保持して行った。また測定条件として、振動数を振動なし(0Hz)、18Hz、30Hz、上下最大振幅を4.15mm、8.30mmと変化させた。各筋電図測定値は最大随意収縮時のRoot Mean Square(RMS)振幅値を100%として正規化し、%RMSとして表した。統計処理は反復測定分散分析およびTukeyの多重比較を用いた。
【結果と考察】振動数の変化に関しては、すべての筋で有意差が認められ、0Hzから30Hzと高振動となるにしたがって筋活動は有意に高くなった。さらに振幅の変化に関しては、4.15mmよりも8.30mmの高振幅で筋活動は有意に高くなった。また足圧中心位置の変化に関しては、すべての筋で有意差が認められGC、SOは前方位で有意に高く、RF、VM、MH、TAは後方位で有意に高かった。振動数0Hzでの各筋の測定値は、RF(前方位6.4%、中間位10.9%、後方位11.6%)、VM(17.4%、25.4%、24.2%)、MH(2.7%、2.4%、2.6%)、TA(1.7%、12.7%、32.5%)、GC(11.1%、5.0%、5.4%)、SO(29.1%、11.1%、6.9%)であった。一方、振動数30Hz、振幅8.30mmでの各筋の測定値は、RF(前方位17.4%、中間位23.2%、後方位31.6%)、VM(42.1%、66.7%、77.9%)、MH(11.8%、13.1%、22.3%)、TA(14.0%、26.7%、60.7%)、GC(43.0%、30.6%、36.2%)、SO(78.5%、48.1%、39.3%)と振動なしのスクワットに比較し2~3倍大きくなった。一般にスクワット動作中の筋活動を増加させるためには、バーベルスクワットや片脚スクワットなどのように下肢への負荷量を増加させることが多いが、本研究結果から、振動刺激を用いることにより下肢への負荷量を増加させることなく筋活動を高められることが示唆された。

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© 2007 日本理学療法士協会
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