理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 683
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理学療法基礎系
肩甲骨面挙上の捉え方の違いについて
肩関節水平内転角度を中心に
*川井 謙太朗中山 恭秀粂 真琴吉田 啓晃伊藤 咲子
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抄録

【目的】肩甲骨面挙上とは一般的に水平内転30°の挙上とされるが、実際には肩甲骨は胸郭の影響を受けるため、挙上角度が増すと共に水平内転角度が変化する運動と考えられる。高濱らは、肩関節挙上と肩甲骨面の関係について、挙上30°では水平内転30°、挙上60°では水平内転45°、挙上90°以降では水平内転60.9°で肩甲骨面と一致するとしている。臨床において、関節可動域訓練やcuff-Y-exercise、上肢屈曲を伴う日常生活指導をする際、肩甲骨面での運動は重要となる。しかし、肩甲骨面挙上とは明確な定義がなく、肩甲骨を三次元的に捉える必要があり、各理学療法士(以下、PT)により捉え方に相違があるように感じられる。そこで今回、肩関節挙上角度を30°・60°・90°・120°・150°に制限した中で、肩甲骨面挙上測定の信頼性について検討することを目的とした。尚、当大学倫理委員会の承諾を得て行った。

【方法】肩関節に既往のない20・30歳代の教職員15名(男性9名、女性6名)・右15肩を対象とした。平均年齢26.6±4.2歳、平均身長159.5±11.7cm、平均体重59.8±12.5kgであった。検者は5名のPT(経験年数2~15年、平均7年、男性3名、女性2名)とした。開始肢位は、端坐位にて体幹中間位、肩下垂位、肘伸展位、前腕回内外中間位とした。挙上角度を150°まで30度ごとに制限した中で、検者は肩関節を開始肢位より肘伸展位、前腕回内外中間位のまま数回他動挙上し、肩甲骨面挙上と感じた肢位にて保持した。測定順序は無作為とし、評価期間中の情報交換は禁止した。1名の測定者が、水平内転角度を計測した。計測方法は、計測肢肩峰の上方より水平面を投影して角度計にて最小単位5°で計測した。各挙上時水平内転角度計測の2名の検者間信頼性は、平均0.99が確認された。統計処理は、PT5名の肩甲骨面挙上測定の検者間信頼性について、級内相関係数(ICC.2.1)をした。

【結果】挙上30°・60°・90°・120°・150°の順に、級内相関係数は0.93・0.92・0.95・0.72・0.69であった。水平内転角度の平均は34.9°・42.6°・49.9°・53.6°・58.9°であった。

【考察】本研究より、挙上90°までは検者間信頼性は高い結果となったが、挙上120°・150°においては、やや信頼性が劣る結果となった。これは、臨床において、各PTが挙上90°までは、肩甲骨面を意識する機会が多いことを示唆していると考える。全ての関節包、靭帯が最も弛緩するscapula plane上45°挙上位での評価・訓練や、疼痛誘発テスト、腱板機能訓練時など、肩甲骨面を基準にして行う評価・訓練は、挙上90°未満に多い。また、挙上120°・150°でやや信頼性が劣った理由として、挙上90°以降では、胸鎖関節・肩鎖関節を中心に鎖骨の動きと共に、肩甲骨も外転・上方回旋に加え下方傾斜が起こり、肩甲骨を空間的(三次元的)に捉えることが複雑化した為と考えた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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