理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 190
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内部障害系理学療法
リンパ浮腫患者に対する複合的理学療法の治療効果
*長ヶ原 真奈美長谷場 純仁園田 睦
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抄録
【はじめに】近年、リンパ浮腫に対する治療は複合的理学療法(以下、CDP)を永続的に行うことが日本でも最良とされてきている。今回、子宮頸癌に続発した両下肢リンパ浮腫に対しCDPを施行し、学会発表等に承諾を得た症例について経過を含めて報告する。
【症例紹介】49歳、女性。平成17年11月に両下肢リンパ浮腫で発症し子宮頸癌と診断された。CT上、骨盤腔内リンパ節に多数の転移を認めたほか、左肺にも転移を認め治療は化学療法を中心に行われた。平成18年3月2日、浮腫の減退を目的に理学療法開始となった。
【評価方法】浮腫に対する評価として毎回の治療前後に下肢周径を測定した。測定部位は膝蓋骨上縁(以下、P上縁)、P上縁から上10cm、P上縁から上20cm、下腿最大、足関節、足背(MP関節部)とした。また治療前に皮膚状態のチェックとStemmer testを実施した。ADLに関してはBarthel Index(以下、B.I)を用いた。
【理学療法プログラム】治療は腹部以外へのリンパマッサージ、弾性包帯による圧迫、圧迫下での運動療法、セルフケア指導を行った。腹部へのアプローチはリンパマッサージの代わりに腹式呼吸、軽擦を行った。セルフケアに対しては病棟において下肢挙上やスキンケア等の指導を行い、化学療法中もできる限り行ってもらうようにした。
【結果】1回の理学療法を施行することによる即時効果として平均3.3±0.8%(平均±標準偏差)の周径の減少がみられた。理学療法介入1か月後の下肢周径はP上縁8.8%、P上縁から10cm 6.5%、P上縁から20cm 9.6%、下腿最大7.2%、足関節9.8%、足背 16.2%の減少がみられた。また皮膚症状では初期評価時に両側に冷感、両側下腿の多毛、光沢感を認めたが、光沢感の減少がみられ、stemmer testは初期時左側が陽性であったが陰性となった。B.Iは65点から90点へ改善し、トイレはポータブル使用であったが病棟トイレ使用が可能となり、活動範囲の拡大などがみられた。
【考察】今回、腫瘍摘出を受けていないリンパ浮腫患者に対しCDPを施行し、下肢の周径減少、皮膚症状の軽減、ADLの改善を得ることができた。先行研究において治療対象となる患者は主に外科的治療を施行した後に浮腫を発症した例が多い。本症例は先行研究と比較して浮腫の減少率は小さかったが、この原因として原疾患に対する治療に平行してCDPを施行したことがあげられる。以前よりリンパ浮腫に対する認知度の低さや治療開始の遅れを言われてきたが、本症例を通して積極的に理学療法を行っていくことが重要であると考える。
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© 2007 日本理学療法士協会
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