理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1086
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生活環境支援系理学療法
リハビリテーションの視点から開発したゲーム機の効果について
前頭前野における脳血流変化
*上島 隆秀高杉 紳一郎河野 一郎禰占 哲郎岩本 幸英河村 吉章小野 雄次郎山下 正渡辺 睦林山 直樹
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抄録

【目的】我々は株式会社ナムコ(以下,ナムコ)と共同で,高齢者でも安全かつ容易に下肢・体幹筋トレーニングが可能なゲーム機「ドキドキへび退治RT」(以下,へび踏み)を開発した。今回,ゲームプレイ中の脳血流変化を測定し,ゲームによる脳機能活性化について検討したので報告する。
【方法】被験者は健常成人男性8名(平均年齢38.8歳)であった。脳血流変化は,前頭前野における酸素化ヘモグロビン(以下,oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン,総ヘモグロビンの初期値からの変化量を,近赤外分光法にて測定した。測定機器は島津製作所製OMM-2001で,測定用プローブを前頭部に装着した。解析は,oxy-Hbの最大値および最小値から脳血流変動値を算出し,その値について比較検討した。実施したタスクは,「ワニワニパニックRT」(ナムコ製,以下ワニ叩き),「へび踏み」及び下肢筋力増強運動(以下,下肢筋トレ)とした。測定肢位は,「ワニ叩き」では立位,「へび踏み」及び下肢筋トレでは椅坐位であった。測定時間は,タスク実施60秒,タスク実施前に安静20秒,タスク実施後に安静40秒の計120秒とした。下肢筋トレは,重錘負荷による膝伸展運動であり,頭位の変化による影響を最小限にするため,被験者にはいずれのタスクにおいても可能な限り頭を動かさないように指示した。なお,被験者には事前に十分な説明を行い,同意を得た上で測定を実施した。
【結果】前頭前野における脳血流変化は,個人差が大きく一般化できる特徴は見いだせなかったが,下肢筋トレに比べゲームにおいて,より大きな脳血流変化を生じる傾向が認められた。また,ゲーム経験の程度により,被験者間の特徴の違いも認められた。
【考察】従来の業務用ゲーム機の多くは主に上肢を使うものがほとんどであるが,「へび踏み」は開発当初より下肢・体幹筋の活発な活動を狙っている。介護予防対策の一つとして,腸腰筋や前脛骨筋の強化が重要であるが,「へび踏み」は,楽しみながらこれらの筋肉をトレーニングすることが可能である。前頭前野は意欲や感情の中枢とされ,前頭前野の活性化は認知症予防対策としても注目されている。今回,脳血流変化に個人差が認められたことから,一律にゲーム機を使用するのではなく,個別対応としてゲーム機選択を行うのがよいのではないかと考える。
【まとめ】ナムコと共同で開発したゲーム機の効果について,脳血流変化の観点から検討した。今後,本ゲーム機使用による介入効果についても研究を進めたい。

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© 2007 日本理学療法士協会
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