理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 406
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教育・管理系理学療法
臨床実習と自己効力感との関係
*浅川 育世佐藤 裕子
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キーワード: 臨床実習, 自己効力感, GSES
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抄録

【目的】自己効力感(セルフ・エフィカシー)は行動特性を示す概念のひとつである。自己に対する有能感・信頼感を指し,自己効力感が高いほどストレスに対する耐性があるとされ,また,成功体験が繰り返されることで,近似した状況でも行えるだろうといった自己効力感に結びつき,状況が変化しても同じ行動が行えるようになるとされる。我々は,臨床実習が学生に与えた影響の一部を自己効力感から検討した。
【方法】本学理学療法学科在校生247名を対象に,一般性セルフ・エフィカシー・スケール(以下GSES)を用い調査した。調査は4年生の実習が終了する2006年10月に行った。学生には任意で調査に参加してもらい,最終的に106人(42.9%)分のデータが収集された。統計処理はSPSS 14.0J for windowsを用い,4年生と他学年のGSES得点の差の検定には対応のないt検定を用い,学年によるGSES得点の平均の差の検定にはkruskal wallis順位和検定を用いた。また,実習で用いた評価表の各項目の評価を,優から不可に対し,3点から0点を配点し,合計点とGSES得点に関係があるかを見るために,Spearman順位相関係数を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】4年生のGSES得点は平均8.50(SD=3.38)で他学年のGSES得点は平均6.82(SD=3.71)であり,4年生が有意に高かった(p=0.04)。各学年間のGSES得点は3年生が平均6.14(SD=3.28),2年生が平均7.97(SD=3.86),1年生が平均6.58(SD=4.41)であり,有意な関係は見られなかった。また,4年生のGSES得点と実習の成績には相関は見られなかった。
【考察】看護学生・看護師を対象にした先行研究において自己効力感は1年目の有職者で学生より低くなることが報告されている。これは臨床1年目に受ける衝撃反応,いわゆるリアリティーショックに起因するものと考えられている。我々の予想では,臨床実習を終了した直後の学生は,患者や指導者と対峙し,リアリティーショックを体験し,自己効力感は低くなるものと考えていた。しかし,結果は予想に反するものであった。臨床実習においては,指導者の指導の下,患者と接することが基本であり,失敗体験よりもむしろ成功体験を経験することが多いと思われる。このことが自己の自信を高めたものと考えた。しかし,評価の成績との関連は見られなかった。成績の優劣よりも,無事に臨床実習を終えたという実感が勝ったのかもしれない。更に実習の効果と自己効力感との関連を明らかにするには現3年生の自己効力感を縦断的に調査していくこと,4年生の就職後の自己効力感を縦断的に調査していくことが必要だと考える。

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© 2007 日本理学療法士協会
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