理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1
会議情報

理学療法基礎系
持ち上げ動作前の吸気活動は腹腔内圧の上昇に影響を及ぼすか?
河端 将司島 典広西薗 秀嗣
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景と目的】腹腔内圧の上昇は脊柱を固定させ、体幹に伸展モーメントをもたらす。特に持ち上げ動作では、腹腔内圧による脊柱安定化作用が腰部障害の予防に重要な役割を担っている。先行研究より、腹腔内圧は意図的な最大呼気位に比べ最大吸気位で上昇しやすく、吸気量の影響を受けると示唆されている。しかし、異なる強度の持ち上げ動作において、中枢神経系の制御によって吸気活動がどのように変化し、腹腔内圧の上昇に影響を及ぼすかについては明らかにされていない。本研究では、異なる強度の持ち上げ動作における動作前の吸気量が腹腔内圧の上昇に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】健常男子大学生11名(22±2歳、173±7cm、64±7kg)を対象に、研究主旨を説明し書面にて同意を得た。本研究は本大学院の倫理委員会の承認を得て行った。腹腔内圧は圧センサー(MPC-500)を肛門より挿入し直腸圧を得た。吸気量はフローメーター(FM-200)から積分値を得た。持ち上げ課題は体幹前傾位、膝関節伸展位にて張力計を介した鉄棒を膝蓋骨上縁で把持させ、3秒間の等尺性伸展動作とした。最大努力(100%MVC)後、30%、45%、60%、75%、90%MVCの持ち上げ課題をランダム化し、各々練習後に3回測定した。試行間に十分な休息を与え疲労の影響を除いた。データ解析は持ち上げ直前の吸気量(2相)から呼気量(1相)を減じた値を吸気量として算出し、腹腔内圧は動作中の上昇量を求めた。意識的な呼吸活動を避けるため呼吸に関する説明は一切控えた。強度変化に伴う吸気量および腹腔内圧の変化は反復測定一元配置分散分析と多重比較Dunnet法を用い、吸気量と腹腔内圧の関係にはピアソンの相関係数を用いた。
【結果】吸気量と腹腔内圧はいずれも強度に関する有意な主効果を認めた。安静吸気量を100%とすると、吸気量は30%~90%MVC課題の順に112±55%、144±51%、161±51%、192±65%、207±51%(mean±SD)と漸増し、多重比較の結果、安静吸気量を対照として45%MVC以上で有意差を認めた。腹腔内圧も順に19±11mmHg、36±19mmHg、49±21mmHg、72±29mmHg、96±41mmHgと漸増し、安静時を対照として30%MVC以上で有意差を認めた。吸気量と腹腔内圧との間には有意な高い相関を認めた(r=0.99)。
【考察】本研究では各課題前の練習で強度を認知させたため、持ち上げ動作前の吸気活動は中枢神経系で制御された活動といえる。動作前の吸気量は30%MVCでは安静吸気量と有意差を認めず、中等度の強度では安静吸気量の約1.5倍、高強度では約2倍と有意に増大した。さらに動作中の腹腔内圧の上昇と高い相関関係にあった。これらは、腹腔内圧の上昇は低強度課題では安静吸気量レベルで可能であるが、中等度以上では吸気量を有意に増大させる必要性を示唆している。即ちこれは中等度以上で要求される腹腔内圧の上昇を有利にさせる吸気戦略と考えられ、動作前の吸気活動の重要性を示唆している。

著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
次の記事
feedback
Top