理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 17
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理学療法基礎系
不安定板上での立位姿勢制御の加齢変化
指標の有無による違い
池添 冬芽浅川 康吉島 浩人市橋 則明
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抄録

【目的】本研究の目的は、若年者と高齢者を対象に不安定板上で立位姿勢を保持したときの不安定板傾斜角度の変動や傾斜位置について評価し、これらの立位保持時の指標の有無による違いを明らかにすることである。
【方法】対象は本研究に同意が得られた施設入所高齢者25名(平均年齢83.8歳)および若年者20名(平均年齢23.6歳)とした。不安定板に加速度計が取り付けられたディジョックボードプラス(酒井医療社製)を用い、前後方向にのみ不安定板を傾斜できる設定で測定した(最大傾斜角度±6度)。不安定板上で開脚立位姿勢をとり、できるだけ不安定板を水平に保って20秒間立位保持するよう指示したときの不安定板の水平からの傾斜角度をサンプリング周波数40Hzでコンピュータに取り込んだ。この値から二乗平均平方根した指数(角度変動指数)を求めた。さらに、このときの前後方向の平均傾斜位置(前後位置)を求め、この前後位置を基準とした平均傾斜角度変動値(平均変動)を算出した。コンピュータの画面上に不安定板の水平位置を示す目標点と、それに対する被験者の傾斜位置点がリアルタイムに表示されるように設定し、被験者にそれらの指標を視認させながら立位保持させた場合(指標あり)と、指標を視認させずに立位保持させた場合(指標なし)との角度変動指数、前後位置、平均変動を比較した。
【結果と考察】角度変動指数は高齢者で指標あり1.82±1.85、指標なし3.49±2.57、若年者で指標あり1.18±0.48、指標なし1.62±0.73と、高齢者・若年者ともに指標なしで有意に増加した。高齢者と若年者の角度変動指数を比較すると、指標ありでは有意差はみられなかったが、指標なしのときには若年者より高齢者の方が有意に大きかった。さらに、指標なし/指標あり比は若年者より高齢者の方が有意に大きい値を示した。これらの結果から、高齢者の立位姿勢制御において、指標がある場合は不安定板の水平位置からの傾斜変動の程度は若年者と比較して必ずしも大きくないが、足底や足関節の固有受容器からのフィードバックがうまく使えず視覚による代償が大きい高齢者では、指標がなくなると不安定板の傾斜変動が著明に大きくなることが示された。
前後位置は高齢者で指標あり-1.01±1.99度、指標なし-2.00±3.43度、若年者で指標あり-0.004±0.58度、指標なし-0.69±1.41度と、高齢者・若年者ともに指標なしの方が有意に後方に傾斜していた。しかし、この前後位置を基準とした平均変動については高齢者・若年者ともに指標なしと指標ありとの間に有意差はみられなかった。また、高齢者と若年者の前後位置を比較すると、指標あり・なしともに高齢者の方が有意に後方に傾斜していた。このことから、高齢者の方がより後方に不安定板を傾斜させた位置で、立位姿勢制御をすることが示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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