抄録
【はじめに】我々は第42回本学術大会で人工膝関節全置換術2週間クリニカルパス(以下CP)の運用の可能性について報告した。我々は人工股関節全置換術(以下THA)においても同様の理学療法(以下PT)プロトコールで2003年より3週間CPを導入し、2005年には2週間CPへの改定とPTプロトコールの変更を行った。今回2週間CPと3週間CPについてPTの観点から比較検討したので報告する。
【対象】3週間CP群が2004年2月から2005年7月までの片側セメントレスTHAを施行し自宅退院した28名(男性2名、女性26名)と2週間CP群が2005年8月から2007年10月までの片側セメントレスTHAを施行し自宅退院した35名(男性9名、女性26名)
【方法】PT退院アウトカムを(1)T字杖(或いは片松葉杖)で200m歩行可能(2)階段昇降が手すりを使用し可能(3)床の立ち座り動作が台を使用し可能(術前施行していた場合に条件に含む)と設定し基準に到達した時点とした。3週間CPから2週間CPへのPTプロトコール改定内容は、術後第1病日(3週間CP:2週間CP=端座位保持練習:立位保持練習)以下同様に、術後第2病日(立位保持練習:平行棒内歩行練習)、術後第3病日(平行棒内歩行練習:歩行器歩行練習)へと早期荷重による歩行練習開始時期の短縮を行った。歩行器歩行獲得期間・杖歩行(20m)獲得期間・手術からPT退院アウトカム達成期間・手術からの在院日数について対応のないt-検定・Mann-Whitney U検定・χ2乗検定を用いて2群間で検討を行った。統計学的処理は、SPSSを用い危険率5%未満を有意とした。2週間CPのPT退院アウトカム達成期間の負のバリアンスも調査した。
【結果】歩行器歩行獲得期間(3週間CP:2週間CP=6.0±2.1日:3.7±1.7日 p<0.001) 以下同様に、杖歩行獲得期間(10.6±4.6日:7.1±3.1日 p=0.001)、手術からPT退院アウトカム達成期間(14.1±3.8日:11.3±4.4日 p<0.01)、手術からの在院日数(19.1±2.8日:17.1±5.0日 p<0.05 )に有意差を認めた。2週間CPのPT退院アウトカムの負のバリアンスは6名で表層感染1名、疼痛3名、術後脳梗塞1名、患者の練習意欲の低下1名であった。
【考察】近年、医療機関ではDPCなど在院日数短縮傾向にありPTでは早期のADL獲得が求められている。セメントレスTHAにおいても術後早期に荷重歩行を獲得させることが在院日数短縮に有効であるとの報告があり、当院の結果でも2週間CP導入にて歩行獲得期間・手術からの在院日数の短縮に有意差を認めた。また2週間以内にPT退院アウトカムを達成したのは約83%(29/35名)と良好な結果が得られ2週間CPのPTプロトコールの妥当性が示唆された。