理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 612
会議情報

骨・関節系理学療法
マッケンジー法が著効した腰椎分離すべり症の一症例
赤羽 秀徳松平 浩岩貞 吉寛
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】腰椎分離すべり症には、腰椎伸展運動は禁忌という記載が見受けられる。マッケンジー法に基づいた評価の結果、腰椎伸展運動を導入し、数年来感じていなかった腰の軽さを獲得し、良好な回復が得られた症例を報告する。
【症例紹介】35歳男性。職業:塗装工。診断名:腰椎分離すべり症。
【問診】症状分布:腰部から右臀部にかけて間欠的な痛み。VAS:6.5。発症後の経過:4年ほど前からきっかけなく発症し徐々に悪化。発症時の痛みは臀部のみ。悪化要因:長時間の座位後の立ち上がりおよび立位。同一姿勢での臥位。朝寝起きと仕事中夕刻になると悪化。改善要因:歩行。動いているとき。日中は比較的楽。睡眠状況:寝返りによる痛みで睡眠障害あり。仰臥位膝下枕、側臥位で屈曲位。ベッド使用。腰痛の既往歴:18歳からぎっくり腰4回。今回の腰痛の治療歴:針、電気治療、スポーツ整体。改善せず。内服薬:なし。
【理学検査】姿勢:座位、立位とも軽度体幹前傾位。腰椎前彎減少。体幹側方偏位なし。神経学的所見:問題なし。自動運動検査:立位屈曲は軽度制限(FFD2cm)、立位伸展は重度制限、腰部痛出現。反復運動検査:立位での屈曲は症状に影響なし。臥位での伸展は、初め伸展域に達しないが、1回ごとに可動域の改善がみられ8回目には中等度伸展位まで可能に。その後端座位になり、腰の軽さに感嘆。自動運動再検査:立位屈曲不変。立位伸展は中等度の制限に。以上の検査より、ホームエクササイズとして、腹臥位での伸展、あるいは状況により立位での伸展を2時間に10回、かつ症状を予期したときに行うよう指導。但し症状が悪化したときはすぐに中止し、電話で連絡を入れるよう伝えた。また、座位で腰椎前彎を保持するためにランバーロールの使用を薦めた。
【第2回目】約1月後。症状改善傾向。VAS:2.0。「日常生活では痛みが無くなった。仕事中もエクササイズで良くなっている。」姿勢良い。方針:このまま継続。
【考察】腰椎分離すべり症は、X線画像診断による病名であり、現在の症状との関連は慎重に判断すべきである。本症例はその病名のために腰椎伸展を禁止され数年にわたり腰痛に苦しんでいた。マッケンジー法は、問診と力学的運動検査から、個々に必要な「セルフエクササイズ」や「日常生活での留意点」を中心にプログラムを組み立て、治療を進めていくものである。今回、問診・検査より伸展運動を選択し日常の姿勢・エクササイズに取り入れ、自己管理を図ることにより症状の改善が得られた。
【まとめ】約4年来の腰痛を患っていた腰椎分離すべり症患者に対し、マッケンジー法による治療を行い良好な結果が得られた。個々の病名ではなく症状から判断した姿勢・エクササイズ指導の必要性および重要性を改めて感じた。

著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top