主催: 社団法人日本理学療法士協会
【目的】当院では新鮮アキレス腱断裂症例に対し、6 strand modified Kessler縫合法とhemi-circumferential cross stitch補助縫合法を用いて腱縫合術を施行している。従来、この術式による後療法は術後1日より足関節自動運動を開始、術後1~2週で装具装着し部分荷重歩行を開始する。今回我々は、従来の後療法に改良を加えた早期理学療法を行ってきたので、若干の知見を交えて報告する。【方法】2005年4月から2007年10月に当院整形外科にて手術療法を施行した新鮮アキレス腱断裂17例のうち、両松葉杖免荷歩行で装具装着せずに退院となった2例を除く15例(男性10例、女性5例、平均年齢35.7±9.9歳)を対象とした。受傷機転は、スポーツ中11例、外傷4例であった。全例に対して6 strand modified Kessler縫合法とhemi-circumferential cross stitch補助縫合法を用いて腱縫合術を施行した。手術当日は自然下垂位でショートギプスシーネ固定を行い、術後1日で除去した。また、従来通り術後1日からの足関節自動運動に加え、他動による関節可動域(以下ROM)訓練も開始した。同時に、膝伸展位での可及的全荷重立位訓練も開始した。足関節背屈0°に到達し、踏み返し予防装具が完成されると、装具を装着し全荷重歩行訓練を開始した。装具装着にて歩行および階段昇降が可能となり次第退院となった。【結果】全症例において術後1日から足関節に対する自動および他動ROM訓練を行うことが可能であった。術後平均4.1日で足関節背屈0°に到達した。また、膝伸展位での可及的全荷重立位訓練は全症例5日以内に行うことが可能であり、開始期間は術後平均3.2日であった。装具装着までの期間は、術後平均7.2日、装具装着下での歩行・階段可能は平均8.9日、入院期間は平均9.7日であった。現時点において、術後再断裂症例は認めていない。【考察】当院で施行している術式は、強固な縫合術である。窪田らは、腱修復後、直後より自動運動を行うと、固定した際に必発する張力低下が生じず良好な治癒過程を示す、と報告している。また、アキレス腱断裂診療ガイドラインによると、アキレス腱断裂治療後の患側に何らかの機能低下が残る、とされているのがグレードAである。このことから、術後長期間にわたりギプス固定することなく、術後1日目から理学療法を行うことで、腱修復の促進と術側機能低下を極力軽減できると期待される。また、現時点で再断裂症例を認めていないことから、この術式による術後早期理学療法は施行可能であると考えられる。【まとめ】新鮮アキレス腱皮下断裂に対する6 strand modified Kessler縫合法とhemi-circumferential cross stitch補助縫合法を用いた腱縫合術は、術後早期からの自動および他動ROM訓練および全荷重立位訓練、装具装着による全荷重歩行が可能である。