主催: 社団法人日本理学療法士協会
当院が行っている理学療法士による水中運動療法
~水中理学療法プログラムの進め方~
野尻圭悟・大野木翔一・諸上大資
ユニタ医療法人 ユニタ整形外科・形成外科クリニック
Keywords
水中運動・浮力・理学療法
【はじめに】
度重なる医療法の改正に伴い、リハビリテーションにおける診療点数は低下の一途をたどっている。しかし、社会から求められる理学療法士の役割は逆に大きくなっているように思う。理学療法の次なるフィールドを、理学療法士自身が考え、自らその道を切り開く必要がある。そこで当クリニックでは、理学療法士が水中に入り「水中での理学療法」を行っている。ここでは、その水中運動の実施方法について紹介する。
【施設紹介】
当クリニックでは、水治療法施設(タラソセラピーハウス)が併設されている。水には食塩を混ぜ、限りなく海水の濃度に近い状態を人工的に作り出している。淡水に比べより浮力を生じ、発汗作用を促す。また、起伏のある歩行レーンもあり、身体への負荷量を軽減させつつ歩行訓練が可能である。
【水中理学療法】
すべて予約制で、10名を制限とした集団訓練を行っている。30分を1セクションとして週に4回行っている。水中プログラムの内容は、1)short footの意識づけ2)足指機能の再構築3)足・膝・股関節の屈伸軸を作る4)体幹の柔軟性の向上(CAT)5)肩周囲の柔軟性強化(特にRotation)の5つをkey pointとしている。利用者は、THA・TKA術後患者やパーキンソン、膝や肩に痛みがある方など様々である。
【利用者の動向】
現在会員数は全体で190名で、水中理学療法を受けられる方は全体の30%である。残り60%の方は他のプログラムを受講しており、歩行レーンで歩行だけを行う方は10%程である。
【展望】
水中運動では、物理的要素(浮力・抵抗・水圧)を利用し、生理的変化(運動機能・呼吸・循環機能の向上)を及ぼすとされている。免荷量に関しては、通常剣状突起部で70%の免荷となる。当クリニックでは食塩水を使用してるため、その免荷量も大きいものになっている。また、水温を不感温度(33~36°C)にしているため、交感神経を抑制したり、血液の粘性を低下させる。また、水圧により体幹筋に適度な負荷を与え、呼吸訓練を行うことにより肺活量の増大も期待できる。インストラクターが行う運動指導と違い、単に浮力があるから関節への負担を軽減できるとするのではなく、理学療法士は「地上で美しく歩くために水中でどのような運動を行うか」を念頭においている。浮力を見方につけることにより、理学療法のバリエーションが格段に増えるのではないでしょうか。今後も、地上での活動に適した身体を作るために、水中で何をすべきかを理学療法士の観点から考え、実践していきたい。