理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1443
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骨・関節系理学療法
足底挿板によるパフォーマンス向上効果
Functional Ability Testを用いた即時効果の検討
前田 健太郎小迫 伸也小原 和宏尾田 敦
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抄録
【目的】足底挿板は主に足部・足関節障害の治療アプローチの一つとして広く利用されているが、その効果に関する報告はまだ十分ではない。本研究の目的は競技者側にとって最も関心の高いパフォーマンスに着目し,足底挿板作製前後における即時効果について検討することである。
【対象】障害予防目的で足底挿板作製の依頼があった高校女子バレーボール部員14名28肢のうち,データ収集困難だった3肢を除く25肢を対象とした。
【方法】足底挿板は機能的足底板(Functional Orthotic Insole,以下FOI)を使用し,経験を積んだ2名のPTによって作製された。パフォーマンスの評価には下肢の機能的運動能力テストであるFunctional Ability Test(以下FAT)を用いた。FATは(1)片脚幅跳び,(2)片脚8の字跳躍,(3)片脚横跳び,(4)片脚段差昇降の4種目で,それぞれテスト前に十分な練習を行った。「作製前テスト」と「作製後テスト」の順番はFOIの挿入を個人毎に変え,できるだけランダムとした。そのほかの評価項目として足部不安定感をVisual Analogue Scale(以下VAS)を用いて評価した。統計処理は各評価項目のFOI作製前後の比較にWilcoxonの符号付順位和検定を使用し,FATとVASの関連性の検討にはSpearmanの順位相関係数(rs)を用いた。いずれも有意水準を5%とした。
【結果】FATは4項目ともすべて有意に向上した(片脚幅跳びは作製前144.1±21.76cm,作製後154.7±16.8cm,片脚8の字跳躍は作製前13.1±1.2秒,作製後12.5±1.2秒,片脚横跳びは作製前7.4±0.9秒,作製後6.7±0.7秒,片脚段差昇降は作製前9.2±1.0秒,作製後8.5±0.7秒)。足部不安定感は作製前24.8±26.7mm,作製後3.4±7.7mmと有意に改善し,FATの4項目すべてに有意な相関があった(p<0.01)。
【考察】結果よりFOIがパフォーマンスの向上に寄与することが示唆された。FOIは足部外側不安定性に対して独自の工夫をしていることが特徴の一つであり,そのほか足部アーチの保持とウインドラス機構への作用がある。ウインドラス機構は足部の剛性を高め,足関節底屈力に作用する。よって,今回の運動能力向上は着地及び方向転換時の安定性向上と足関節底屈力向上の2点によるものと考えられた。
【まとめ】(1)高校女子バレーボール部員を対象にFOI作製前後のFATを行い,その即時効果について検討した。(2)FATは4項目すべてに有意な改善を認め,足部不安定感と相関関係を認めた。(3)FOIがパフォーマンス向上に寄与することが示唆され、その要因としてFOIによる足部安定性の向上とウインドラス機構への作用効果が考えられた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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