抄録
【目的】慢性心不全（CHF）は平成18年4月の診療報酬改定により正式にリハビリテーション医療の枠組みに組み込まれた。CHFは労作時息切れや易疲労性などの症状により生活機能（LF）の低下を引き起こすが、これまでLFに焦点をあてた研究はなく退院後のLFの実態も明らかではない。今後、本邦ではCHF患者が増加することは自明であり、退院後のLF推移に関する臨床データの集積は、CHF患者のリハビリテーション医療における火急の課題となっている。以上より、我々はCHF患者における退院早期からのLFの推移を調査し、運動とLFの関連性を明確にすることを目的とした大規模前向きコホート研究を開始したので報告する。
【方法】急性増悪にて入院したCHF患者（>65歳）を対象とし、退院後1、3、5、12ヵ月で採血、心エコー、身体機能(筋力、バランス、6分間歩行距離)、慢性心不全自覚症状、不安・抑うつ、認知機能、日常生活動作能力、参加質問紙、ソーシャルサポート、の各項目を測定する。そしてこれらの項目を国際LF（ICF）分類に振り分け、運動とそれぞれのICFカテゴリーとの関連を検討する。
【参加施設と各施設の責任者（循環器医、理学療法士）】
特定医療法人北海道循環器病院（岡林宏明、村岡卓哉）、カレスサッポロ 北光記念病院（秋野正敏、近藤和夫）、財団法人星総合病院（坂本圭司、長尾光祥）、秋田組合総合病院（松岡悟、佐藤奈菜子）、北里大学病院（猪又孝元、松永篤彦、木村雅彦）、聖マリアンナ医科大学（大宮一人、渡辺敏、森尾裕志）、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院（武者春樹、横山有里）、埼玉医科大学病院（牧田茂、山崎宗隆）、杏林大学医学部付属病院（吉野秀朗、竹田紘崇）、群馬県立心臓血管センター（安達仁、熊丸めぐみ）、東海大学医学部附属八王子病院（及川惠子、秋澤理香）、財団法人日本心臓血圧研究振興会榊原記念病院（長山雅俊、齋藤正和）、医療財団法人石心会川崎幸病院（大村延博、手塚純一）、やわたメディカルセンター（勝木達夫、酒井有紀）、岐阜県総合医療センター（瀬川知則、西脇雅）、名古屋掖済会病院（祖父江俊和、松岡立哉）、JA愛知厚生連海南病院（酒井慎一、飯田有輝）、豊橋市民病院（森嶋直人）、田附興風会医学研究所北野病院（野原隆司、岩津弘太郎）、京都府立医科大学附属病院（白石裕一、山本志保）、兵庫県立姫路循環器病センター（水谷和郎、時本清己）、医療法人近森会近森病院（川井和哉、前田秀博）、九州厚生年金病院（折口秀樹、高永康弘）、医療法人天神会新古賀病院（川崎友裕、小堀岳史）、臼杵市医師会立コスモス病院（舛友一洋、竹村仁）、社会保険小倉記念病院（横井宏佳、嶋田誠治）
【まとめ】本研究は実質的に2007年11月より開始されており、今後3年間調査を継続する予定である。本研究によりCHFのLFにおける運動の役割を明確にしたリハビリテーション医療の枠組みが提示されるものと思っている。
