理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1023
会議情報

物理療法
効率的な脂肪代謝を目的とした温熱刺激と運動の併用効果に関する研究
田中 裕子山田 純生中島 將宏神谷 訓康小林 聖典河野 裕治作井 大介上坂 建太清水 優子
著者情報
キーワード: 脂肪代謝, 温浴, 体温
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】内臓脂肪の減少は生活習慣病予防の最重要課題であり、有酸素運動が効果的であると判明している。しかし、生活習慣病を有する者は運動不足が背景にあり、骨格筋への脂肪酸の搬送に重要な血管拡張能や脂肪分解能が低下していると予想される。従って、脂肪代謝を効果的に促進する運動としては脂肪分解能を高め、血管拡張を促す併用刺激を有酸素運動に加えることがよいと思われる。しかし、これまで運動様式が強調されるのみで併用刺激に関する検討はない。本研究では運動の併用刺激として41°C10分の温浴刺激を設定し、それが脂肪燃焼との関連を検討した。
【方法】対象は健常男子大学生9名(BMI:20.9±1.7、年齢24.1±2.6歳)。自転車エルゴメータを用いた心肺運動負荷試験を行い、呼気ガス代謝指標によりAnaerobic Threshold(AT)を決定した。後日、自転車エルゴメータを用いた定常負荷試験(定常負荷)を、41°C10分の半身浴に引き続いて運動を行う場合と、温浴なしで運動を行う2条件下にて行い、脂肪代謝量を比較した。定常負荷は、3分間のwarm-up後、ATV(dot)O2の60-70%の一定強度で20分間、3分間のcool downを行った。運動前および運動中は呼気ガス代謝指標、深部体温を連続的に測定した。脂肪代謝エネルギーは呼吸商とV(dot)O2からPeonnet, F(1991)の式を用いて算出した。運動時脂肪代謝エネルギーは、運動時間全体の脂肪代謝エネルギーから運動時間に相当する運動前安静端座位での脂肪代謝エネルギーを差し引いたものとした。統計は対応のあるt検定ならびにspearmanの積率相関係数を用いた。本研究は、名古屋大学医学部倫理委員会保健部会の承認を得た。
【結果】運動時間全体での脂肪代謝エネルギーは、温浴により平均で9.4%増加したが有意ではなく個人差が大きかった。そこで安静時平均体温を36.5°Cで区別して検討すると、36.5°C未満の4名では平均69±55%増加し(p=0.07)、36.5°C以上の5名では平均24±5%減少(p=0.001)しており、温浴による運動時脂肪代謝エネルギーの増加量と、安静時の深部体温との間には強い負の相関がみられた(r=-0.718,p=0.03)。
【考察】運動前の温浴刺激は全体では差が認められなかったが、体温別にみると低い者では脂肪代謝促進に作用し、高い者に対し脂肪代謝抑制に作用する傾向がみられた。これは脂肪代謝促進のための温浴刺激には個人差が存在することを示唆しており、適応を検討する際に考慮すべき事項になるものと思われた。41°C10分の温浴刺激は脂肪分解作用を持つアドレナリン(Ad)の血漿濃度を上昇させること、血漿遊離脂肪酸(FFA)濃度を上昇させることが報告されている。これより、体温が低い者では温浴刺激によるAd分泌と脂肪分解が運動時の脂肪代謝を促進したと考えられた。逆に、血漿Ad濃度の過剰な上昇はFFA酸化を抑制するとの報告があり、体温が高い者ではこれらの機序が背景にあった可能性が考えられた。

著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top