理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 811
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教育・管理系理学療法
極短時間の人体解剖見学実習に対する学生の意識と人体解剖見学実習への取り組みに対する課題
岩本 凡子井上 隆之大谷 浩
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抄録
【目的】近年、急速に医療技術系の専門学校や大学がその数を増やしてきており、人体解剖見学実習に対する取組みの報告も多くなされている。本校も解剖学講義の一環として、他大学関係各位のご理解の下、人体解剖見学実習を行わせて頂いている。医学部に出向して解剖遺体を見学するため、実際の見学時間は限られてくる。その限られた時間を有効に使うため心得、敬意の念、御遺体の扱い方、機器の扱い方を中心に事前講義、諸注意に力を注いでいる。本研究では、解剖見学実習を行うにあたり本校で行った事前講義の講義前と講義後および4時間の見学実習後にアンケート行った。それらの結果に基づき、極短時間の解剖見学実習で学生の意識が実習前と後で、どのような変化をもたらしたのかを調査し、結果の分析から人体解剖見学実習への取り組みに対する問題点・課題を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は平成18年度、19年度の本校2年生225名とした。解剖見学実習の事前講義の前後、そして実習終了後1週間以内に1)解剖見学実習のイメージは?2)解剖見学実習に一番必要なものは何か?3)解剖見学実習を行うに当たり一番大切なことは何か?4)何のために解剖見学実習を行うと思っているか?5)解剖見学実習で一番何をしてみたいか?の5項目について自由回答法で行った。
【結果】1)の質問に対して、講義前では不安、緊張、期待といった回答が多かったが、講義・実習後には減少した。2)3)の質問に対しては、実習後には意欲・自覚・感謝といった回答が増加し、知識という回答が減少した。4)の質問に対しては、実習後医療人への自覚という回答が増加した。5)の質問に対しては、事前講義前では、器官や関節など具体的な内容が多かったが、講義後、解剖見学実習後で下がる傾向であった。
【考察】質問1)から3)より知識という回答率があがったことから、人体解剖見学実習では、1年次に講義で行った解剖学の知識の復習や予習の必要性を学生が実感していたことがいえる。質問2)より人体解剖見学実習に対する意欲や意気込み、また医療人としての自覚といった回答率が実習終了後に増え、さらに御遺体への感謝といった回答が上がっていた。このことから心得、敬意の念、扱い方の説明を受けたことで、医療人としての自覚といったものが出てきたのではないかと考えられる。人体の構造をより深く知る必要性からコ・メディカル教育においても、御遺体を用いた解剖見学実習が重要であるのは言うまでもない。しかしながらそれらを学ぶ環境や指導力が整っていない状況下で短時間の見学実習を行う場合、学生の学ぶものは限られてくる。その短時間の見学実習で学生が学べるよう、学内専任教員の人体解剖に対する見識を高め、それを学生に指導し伝えることで実際に行われる短時間の解剖見学実習でも学生が得るものは大きい。
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© 2008 日本理学療法士協会
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