理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-013
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理学療法基礎系
脳卒中片麻痺患者の触圧覚検査における一考察
冨田 健一木村 篤史松本 和久
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キーワード: 感覚検査, 触圧覚, 転倒予防
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抄録
【目的】
脳卒中片麻痺患者における触圧覚検査は、麻痺の程度やその回復状況の把握、また麻痺側上下肢の怪我予防及び認知運動療法をはじめとする様々な治療を行うための評価として行なわれる検査である.
従来行なわれてきた触圧覚検査は、Semmes-Weinstein Monofilamentsによる触圧覚閾値や二点識別覚閾値など、感覚の有無やその感度を調査するものであるが、その感知している部位について調査した報告はない.
今回我々は脳卒中片麻痺患者の触圧覚検査において、感知する部位を調査したので報告する.
【方法】
対象は事前に研究趣旨を説明し、同意の得られた脳卒中片麻痺患者12名である(男性6名、女性6名、平均年齢57.5±19.4歳).発症からの平均期間は58.9±66.5ヶ月であり、失語症、認知症を伴う症例は除外した.
触圧覚刺激の感知部位の測定は、足底を対象部位として、足底を1.踵部、2.足根骨内側部、3.足根骨外側部、4.第一中足骨部、5.第二中足骨部、6.第三中足骨部、7.第四中足骨部、8.第五中足骨部、9.第一指、10.第二指、11.第三指、12.第四指、13.第五指の計13箇所に分割し、各部位に数字を割り振られた図を作成し、被検者に提示した.
検者は各症例が知覚しうる最小限の強度の触圧覚刺激を足底の各部位に10回行った.被検者は刺激されたと感知した部位を、図を見ながら数字で回答した.
【結果】
正答率が80%以上は4名、50%以上80%未満は5名、50%未満3名であった.
誤答は、母趾を刺激した際に第一中足骨を刺激されたと感じると回答するなど、隣接する領域を回答する傾向を示す症例が8名であり、他の4名は刺激部位が母趾であるにもかかわらず、踵部を刺激されたと回答するなど、隣接する領域以外を回答する傾向を示した.なお後者は正答率50%以上80%未満の1名、50%未満3名と正答率の低い症例であった.
【考察】
今回調査した脳卒中片麻痺患者において、12人中4人に、触圧覚刺激部位と感知する部位に明らかな差がある症例を認めた.これらの症例においては、立位、歩行時に足底に入力される情報が、実際の部位と異なって感知し、例えば踵にかかった体重を爪先と感知してバランスをとるなど、転倒の要因となる可能性が考えられた.
従来行われてきた触圧覚検査の方法では、蝕圧覚の有無やその感度は確認できるが、刺激された部位が何処かを特定できない症例を選別出来ていなかった可能性がある.したがって脳卒中片麻痺患者を対象とした触圧覚検査では、検者は刺激した部位を被検者がどのように感知しているかを評価する必要があるのではないかと考える.
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© 2009 日本理学療法士協会
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