理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-067
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理学療法基礎系
地域在住壮年者を対象としたCS-30テストの持久力の評価指標としての妥当性
坂川 昌隆下井 俊典
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抄録

【目的】下肢伸展筋力検査の指標として,30秒椅子立ち上がりテスト(30-seconds chair stand test 以下CS-30テスト)がある.CS-30テストは下肢伸展筋力との相関の他に,歩行スピードとの相関が証明され,多くの分野で用いられている.しかし,CS-30テストは30秒間の継続的な運動であり,筋力の要素に加え,持久力の要素が含まれると考えられるが,CS-30テストの持久力の検査方法としての妥当性は検討されていない.今回,CS-30テストがより簡便な持久力の評価方法になるのではないかと考え,CS-30テストの持久力評価指標としての妥当性を検討したので報告する.

【方法】対象は,T県O市の国保ヘルスアップ事業に参加した,地域在住壮年者29名(年齢58.3±6.6歳,身長156.8±8.0cm,体重68.4±9.8kg,BMI27.8±3.1)である.うち21名は同事業運動講座参加前に測定を実施し,8名は同事業実施後に測定を実施し,それぞれA,B群とした.測定項目はCS-30テストと,CS-30テスト前後の自覚的運動強度(Borg Scale),6分間歩行テスト(6 minutes distance 以下6MD)である.統計処理にはCS-30テストと6MDの相関にピアソンの相関係数を用い,CS-30テスト前後の自覚的運動強度の変化にマン・ホイットニーのU検定を用いた.

【結果】対象者全体の結果は,CS-30テストは50.0±10.2回,6MDは529.4±45.4mであり,これらの間には有意な相関が認められなかった.またBorg Scale(中央値,以下同)は,CS-30テスト前後で11,13であり,CS-30テスト前後で有意に高値を示した(p<0.05).しかしA群とB群に群分けしたところ,A群ではCS-30テスト,6MDがそれぞれ48.7±10.9回,536.2±49.0m,B群ではそれぞれ52.4±7.8回,510.6±27.5mであり,A群のみ有意な相関が認められた(r=0.57).Borg Scaleに関しては,A群ではCS-30前後でそれぞれ11,13,B群ではそれぞれ12,13であり,A群のみ有意に高値を示した(p<0.05).

【考察】対象者全体ではCS-30テストと6MDの間に有意な相関が認められなかったが,A群に関しては有意な相関が認められた.この理由として,A群とB群の運動習慣の違いが考えられる.A群は国保ヘルスアップ事業に参加前のため,運動習慣が少ないと予測でき,またB群は同事業実施後の群のため,運動習慣があったものと考えられる.運動習慣があったB群においては,CS-30テストで持久力の評価指標になりえるだけの十分な負荷がかけられず,自覚的運動強度の上昇や6MDとの相関がみられなかったものと思われる.以上のことから運動習慣を考慮すれば,CS-30テストがより簡便に行える持久力の評価指標になると考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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