理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-266
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神経系理学療法
水無脳症児に対する理学療法介入の経験
―快不快に着目して―
門馬 博山田 深関根 裕司岡島 康友
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キーワード: 水無脳症, 扁桃体, 快不快
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抄録

【目的】水無脳症は大脳半球に高度の脳欠損を示す奇型であり,発達において重篤な障害を呈することが多いが,理学療法に関する報告は少ない.今回,水無脳症,及び重症くる病を合併した男児の理学療法に携る機会を得たので若干の考察を加えて報告する.発表に際しては患者家族へ趣旨と内容を十分に説明し同意を得た.
【症例】母が仕事で訪れていた他県にて出生,NICUへ入室.月齢2ヶ月にて当院へ転院.月齢4ヶ月にて脳室腹腔シャント造設術実施.その2週間後より陥没呼吸著明となり,リラクゼーション,安楽姿勢の検討,及び発達フォロー目的にてPT開始となった.
【初期評価】開眼しており落陽現象を仰臥位にて頻繁に認めた.筋緊張は全身で亢進,四肢に軽度の拘縮を認め,他動運動や触感覚に過敏に反応した.下顎の落ち込みと,呻吟を伴った陥没呼吸を呈し,呼吸が詰まると啼泣して強く反り返るという呼吸困難と全身過緊張の悪循環がみられた.また、持続する発熱を認め,不顕性誤嚥による誤嚥性肺炎が疑われた.
【初期の介入】上気道の閉塞による呼吸困難が全身の過緊張,不顕性誤嚥,ならびに拘縮・変形をきたす主因子であると考え,側臥位を含めた3パターンでの安楽姿勢管理を提案した.また家族には体全体を両手で支持し,リラックスが得られるような抱き方を指導した.その結果,2週間後には全身の筋緊張が低下し,成長に伴って徐々に陥没呼吸が改善した.
【次段階の介入】拘縮・変形予防を図るための姿勢管理を継続したところ、介入1ヶ月後から徐々に落陽現象が軽減し,声掛けや身体の揺すりで泣き止むことが増えてきた.そこで家族も交え,声掛けをしつつ四肢,体幹を軽く振動させながら可動域訓練を行い,児の反応をフィードバックして身体定位の改善を図った,1ヶ月後,全身の筋緊張は軽度低下,拘縮がみられていた左股関節の伸展可動域は-20°から0°まで改善した.
【考察】本症例ではMRI画像所見上,脳幹、小脳,間脳までは形成されているが,大脳に関しては前頭葉,側頭葉,後頭葉をいずれも一部をわずかに認めるのみであり,体性感覚,運動制御能力は有さないと考えられた.しかしながら聴覚や前庭系への刺激に対して泣き止むなどの反応が認められ,このような快反応を交えた関わりとポジショニングが過緊張のコントロールに奏功した.本児のように視床や扁桃体など情動反応の中心となる構造が保たれている場合は,外的刺激に対する快不快の情動反応を利用したアプローチが有効であると考えられる.今後も児の観察から快反応を探りつつ,身体の成長に合せた姿勢管理や関節可動域練習などを指導して拘縮・変形の進行予防に努め,児の発達に関して継続的に関与して行く予定である.

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© 2009 日本理学療法士協会
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