理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-394
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骨・関節系理学療法
アキレス腱断裂に対する早期運動療法
―非装具療法への試み―
村上 雅哉宿輪 宏明戸羽 直樹
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抄録

【はじめに】
当院ではアキレス腱断裂術後後療法は補高パッド付の装具を使用し、段階的に足関節の底屈角度を調節してきた.しかし長時間の底屈位が持続することにより、下腿三頭筋の萎縮・背屈制限・筋の肥厚を招く症例を経験することがあった.今回、足関節の角度を術後より底背屈0°としたシーネ固定の装着を6週間と、その期間に早期荷重・他動運動を追加する後療法を考案し、今回の発表にあたり同意を得た6例に対して施行したのでその結果と考察を含め報告する.
【目的】
本研究の目的は早期運動療法と従来の補高パット付装具療法とを比較して治療成績や治療期間を検討することである.
【方法】
対象はH20年4月1日~H20年7月31日までに入院され、アキレス腱縫合術を施行された患者で男性3名・女性3名、平均年齢51.0±13.7歳、入院期間21.3±10.3日であった.後療法は、術後手術室にて足関節の角度を術後より底背屈0°のギプスシャーレを装着した.術後翌日から足関節の他動的関節可動域訓練を開始し、荷重は、術後1週間は免荷・術後1週目よりシーネ装着し両松葉杖を使用し部分荷重(以下PWB)1/3PWB・術後3週より片松葉杖にて1/2PWB・術後4週目より全荷重を行い、術後6週目シーネ除去で全荷重・歩行とした.退院後は、外来にて週2回程度のリハビリ通院と、自宅でも行える足趾運動を指導した.
【結果】
6例中の治療成績は、関節可動域の平均は足関節底屈40°・背屈20°、足関節底屈は徒手筋力検査4以上であった.下腿三頭筋の筋萎縮や肥厚を来たした症例はなく、創部周囲の瘢痕形成や熱感・腫脹なども殆ど見られなかった.また、独歩・階段昇降も自立し、受傷前の生活レベルに復帰された.外来通院期間は77.8±31.1日で、装具使用での外来通院期間の108.1±38.9日より、約1ヶ月短縮することができた.
【考察】
今回の後療法が従来と異なる点は、術翌日より底背屈0°にて開始される点である.従来の方法では、底屈位にて装具を装着するため、再断裂のリスクが軽減されるが、下腿三頭筋の萎縮・背屈制限・筋の肥厚が認められてきた.そこで今回は、主縫合にkirschmeyer法も用いて補助縫合にcross-stich法を追加することで強固な縫合を行い、理学療法を実施する上で早期荷重・可動域訓練を実施することが可能となった.腱縫合後の腱の修復過程は、術後3週間までは張力が維持され、腱縫合部には線維芽細胞が旺盛な増殖を示し、腱に張力と滑動性を同時に加えることにより最大の増殖能力を示すと言われている.また、早期運動療法は、腱の修復過程に充分な張力を与えることになり、より良好な腱修復過程をもたらすと考えられる.本法は、装具を作成しないため患者の自己負担軽減にもつながり患者の満足度も高かった.今後も症例を重ね早期運動療法を確立していきたい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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