理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-241
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生活環境支援系理学療法
高齢者における表在感覚及び固有感覚が転倒予測における重要性
藤本 剛至西口 知宏姫野 太一平山 恭子今滝 真奈宮沢 将史岡﨑 加代子岡田 亜美和嶋 郁子丸山 貴資傍島 聰
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抄録

【はじめに】
高齢者の転倒の発生要因としては、一般的に下肢筋力やバランス能力との関連が多く取り上げられている.また、加齢に伴い表在感覚や固有感覚が低下し視覚への依存が高まり、これらに起因する「つまずき」や「すべり」といった転倒様式も重要である.今回我々は固有感覚に焦点をあて視覚からの情報を遮断した状態でバランス評価と感覚評価(表在、固有感覚)を行い、転倒要注意群と転倒非要注意群との関連について検討したので報告する.
【対象】
当院外来通院中の独歩可能患者24名(年齢71.63±6.79歳、その内訳として下肢疾患12名・脊椎疾患5名・上肢疾患7名)を対象とした.なお著明なROM制限、運動麻痺や下肢関節痛を有する患者は除外した.対象者には研究の主旨を説明し同意を得た後、検査測定を行った.
【方法】
厚生省の転倒スコアシートを質問紙で聴取し、特に転倒と関連がある5項目で6点以下を転倒非要注意群(以下、A群)、6点以上を転倒要注意群(以下、B群)に分け、2群間での比較を行った.評価項目として1.筋力評価は、大腿四頭筋筋力を端坐位膝関節屈曲60°でアニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターを用いて3回行い平均値を算出した.2.バランス評価はfunctional reach test(FRT)・開眼閉眼時における片脚立位保持時間の差(以下、開閉片脚立位)を測定した.3.歩行能力評価は10m歩行時の速歩・緩歩に要した時間の差(以下、10m速緩歩差)を測定した.4.感覚評価として表在感覚と固有感覚評価を行い、表在感覚評価は母趾腹側と母趾球の二点識別覚を測定し、固有感覚評価は位置覚(股・膝・足関節)と障害物(3cm、10cm)のまたぎ動作を測定した.またぎ動作は側方よりデジタルビデオカメラにて撮影し障害物と遊脚側の足尖最小距離を測定し、障害物注視時と前方注視時における足尖最小距離の差(以下、またぎ差)を算出した.統計処理はt検定を用いた.
【結果】
2群間比較で有意差を認めたのは、開閉片脚立位(p=0.001)、二点識別覚の母趾腹側(p=0.05)、位置覚(膝、p=0.043)、またぎ差(10cm、p=0.046)であった.10m速緩歩差は有意差を認めなかった.また有意差は認めなかったが、両群間とも大腿四頭筋筋力、FRTは標準化されたものよりも明らかに低値を示した.
【考察】
10m速緩歩差は一般的に転倒リスクの指標にあげられているが、今回両群間に有意差は認めなかった.一方、二点識別覚の母趾腹側、位置覚(膝)、またぎ差には有意差を認めた.これは運動機能低下より感覚機能低下がより早期に転倒に影響を与えている可能性があると考えられた.つまずきやすべり動作は加齢に伴う表在感覚と固有感覚の低下に起因すると考えられ、これらを評価することで転倒リスクをより早期に予測する指標となることが示唆された.

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© 2009 日本理学療法士協会
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